紳士達の暴走部屋

□お前に酔う
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今夜はいつもより月が近くに浮かんでいて、位置を示すランタンが要らない位にはっきりと船を蒼白く照らし出している。月末恒例の書類整理に追われていたビスタとマルコは、満月の下それぞれ一時の休憩を楽しんでいた。

ビスタは窓から見える月を眺めながらミントティーで一息つき、マルコはというとずっと机にかじりついていたためにガチガチに凝り固まってしまった身体をほぐすべく、甲板に出て軽いストレッチを行っている。
身体を左右に捻りつつ目の前の青白い満月を眺めていたマルコは、ふと、先日の出来事を思い出した。
 
 
あれは、半月ほど前の事だったであろうか。今日のような満月の夜に、空を飛んでいて偶然見つけたのだ。
独り甲板で静かに舞うイゾウの姿を・・・

彼とは乗っている船が違うため(白ひげ海賊団は大所帯ゆえ4隻の船で船団を組み行動しているのだ)顔を合わせるのは隊長の定例会の時と島に上陸した時、それとこうして空の散歩中に見かけた時くらいだ。

マルコはイゾウの元にふわりと舞い降りた。
「邪魔するよい。相変わらず華麗な舞姿だねい」
マルコの声にイゾウは舞うのをやめ、柔らかな笑顔で出迎えた。
「よう、久しぶりだな。お前さんも相変わらず優雅に空中散歩かい?」
「まあねい」
マルコは軽く笑って返し、先を続け、
「それにしても、こんな音楽もないところでよくそれだけ踊れるなぁ」
と、感嘆の声をあげた。
マルコ自身、踊るのは苦手ではない。宴会で陽気な音楽が聞こえてくれば自然と身体が動き出すくらいだ。しかし、無音の場所では全く踊れる気がしない。
しかし、マルコの褒め言葉にイゾウは肩をすくめ、
「音ならあるさ。お前には聞こえないのか?不死鳥なのに」
と答えたのだった。
いつもながら変わった事を言う奴だとマルコは心の中で呟き、意味を問う目線を送る。イゾウはその思いを汲み取り、少し考えてからゆっくりと形の良い口を開き言葉を紡いだ。
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