管理人の献上箱

□(旧)日誌E:遅咲きサフィニア
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言うや否や立ち上がって、早足でオヤジがいるであろう場所へと向かったビスタの背中に、マルコとジョズは呆れ声でエールを送ったのだった。

普段は落ち着きのあるビスタだが、気になる事は追求せずにいられない性格で、こうなると誰も彼を止める事はできない。
ビスタはオヤジの覇気を頼りにずんずん突き進んで、船長室前で立ち止まると躊躇する事なく扉をノックした。来る事が分かっていたのだろう。すぐさまオヤジの声が返ってきて、勧められたとおり堂々と中に入る。オヤジは小さく笑い声を立てて、
「そろそろ来る頃だろうと思ってたぜ、ビスタ。今、話が終わったとこだ。俺は戻るが、この船にゃあイゾウの顔見知りがあまりいないからな。面倒見てやってくれ」
と言うと立ち上がってビスタの肩を軽く叩くと、部屋を出ていってしまった。
オヤジから聞き出そうと思ってたんだが、まあいいかと心の中で呟くと、神妙な面持ちで座っているイゾウに声をかけた。
帽子を取り、紳士らしい立ち振舞いで。
「イゾウ、だったな。初めまして、と言うべきかな。5番隊隊長のビスタだ。話す機会が無かったからな、顔を合わせる事が出来て嬉しいよ。隣、いいかね?」
イゾウは無言でうなずいた。随分表情が固く緊張がピリピリ伝わってくる。緊張を解くべく、ビスタはイゾウの隣に腰掛けると優しい笑みを浮かべた。
「そんなに身構えなくともいいし、タメ口で結構だ。我々は兄弟なんだからな」
笑顔が通じたのか、イゾウの顔から強張りが無くなり、少し落ち着いた表情で口を開いた。
「国の気質でね、役職のある人間の前だと、つい萎縮してしまうんだ。気にしないでくれ。隊長に名前を覚えてもらえてて光栄だな」
やや高めのどこか艶のある心地よい声に、品のよい香が漂っていて、隊員から人気がある理由をビスタは少し理解した。
「ふふ。良い評判はすぐ耳に入るものさ。さっきのオヤジの話も隊長抜擢か何かだと思ってな、いても立ってもいられなくて飛んで来たんだが・・・思い違いかね?」
ビスタの単刀直入な問いに、イゾウは少し困ったような笑みを浮かべた。
「察しがいいんだな。・・・縫帆長になれと言われたんだ。断ったけどな」
ビスタは驚きに細い目を丸くして叫んだ。
「断った?何故だ?君は強い覇気を持ってるし、いい腕をしてると聞くぞ。それに、メンバーはほとんど一緒に乗ってきたワの国の男達だろうし、そんなに気を遣う事もなかろう?」
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