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□オトコだったのね
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「・・今日はここまで!」

綱手の声が森の中で響き、小鳥が二羽パタパタと飛び立った。
サクラは辛うじて立ってはいるが膝に手をつき、
返事すらできずハァハァと息を吐くだけだった。

「前よりはマシになったな。
だけどサクラ、まだ体力に問題アリだ。避けるスピードが目に見えて落ちていたぞ。」

綱手はそう言うと自分の肩を揉みながら

「明日は久しぶりにカカシが休みだから、今夜はアイツとメシでも行ったらどうだ?
アイツもまったく女っ気がなくて可哀相だしな・・・。
じゃあな、先に行くから」

と言ってクルリと背を向け歩いていった。
その背中に大きな声で

「ありがとうございました!」

と言えば綱手はヒラヒラと手を振った。

(そっか・・師匠、今夜飲みに行くって言ってたから気を遣ってくれたんだわ)

サクラは素早く理解して、綱手の姿が見えなくなるとゴロンと草の上に寝転んだ。
7班がバラバラになって、サクラがそれなりに寂しい思いをしているのを綱手は知っていて、
最近のほとんどの夜ご飯をサクラは綱手とシズネの三人でとっていた。

(カカシ先生・・全然会ってないな・・
でも明日は久しぶりの休みなら、今夜は私に付き合わせていいのかしら。
上忍同士で飲みに行っちゃうんじゃあ・・)

ぼぉ〜と考えてると人の気配がした。
そちらに顔を向けると、いま考え事をしていた人物が立っていてギョッとした。

「せ、先生?!」
「よっ!」

カカシは相変わらず何を考えてるのか分かりづらい顔で近づいた。
サクラは思わず急いで立ち上がると、クラリと視界が揺れた。

(あ、ヤバ・・)

こける、と思ったらもう背中を支えられていた。
久しぶりに会ったカカシと思いがけず至近距離で見つめ合う形になってしまい、一気に赤面した。

「ただいま。」

カカシはそう言うとゆっくりサクラの体を起こした。

「・・・おかえりなさい」

なんだか一人で慌てたりしたのが恥ずかしくて下を向いてこたえた。

「そこで綱手様に会ったよ。今夜サクラにメシ食わせてやれって。・・・俺でいいの?」

チラッと片目がサクラに向けられた。

「私は良いけど、先生こそ予定があるなら−「じゃ、決まりだね。」

言い終わらない内にカカシがそう言うとニッコリ笑った。
「居酒屋でいい?」などと聞き、サクラはこくんと頷いた。



三杯目のビールを一口飲むとカカシが言った。

「キレイになったな、サクラ」
「え?!な、何言ってんのよ」

サクラは思わず手の中の枝豆を落とした。
カウンター席で横に並ぶカカシを見るといつもよりも優しい目を自分に向けている気がした。
それにしてもさっきは久々だったとはいえ至近距離で見たカカシにドキドキしてしまった。
大人のクノイチの間では
カカシは里で1、2を争うくらい人気らしいが、ずっと見慣れてきたサクラにはあまり理解ができなかった。
だが久しぶりに姿を見て声を聞いて、少しだけ分かる気がした。
なんだか悔しくて少し意地悪がしたくなった。

「先生、私の事を褒めるなんて・・・それって私のコト、口説いてるの?・・・私、期待しちゃってもいいの?」

得意の上目遣いでカカシを見る。
テーブルに置いているカカシの片手の甲につぅーっと指を這わせた。

(いつも飄々としている先生の慌てるサマが見れるわ)

とサクラは心の中でニンマリした。ところが。

「そうだよ。俺はサクラの事、一人の”女”として口説いてる。」

え。とサクラが驚いた瞬間テーブルの上の手を逆に捕まえられ、カカシの方に引っ張られた。
サクラの頭はカカシの肩にコツンと当たり、見上げるとまた近くにカカシの顔があった。
その瞳は今まで見た事がないくらい熱っぽかった

−−心臓が跳ねた。

(ああ、そっか私・・)

そう思っている間に近づいてきたカカシの唇の形はすごくセクシーだった気がした
サクラは目を閉じて思った。

(そっか私の中で先生は”オトコ”だったのね)

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