めいん1
□白山熱中
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だるそうに体を引きずってきた高杉に、俺は秘密兵器を掲げてみせた。
見た目から涼しげなブルーのフォルムをしたこいつは、5年前から俺の夏の相棒だ。
「もしかしてかき氷すんのか?!」
相棒を目にしたとたんに、高杉は目を輝かせ出す。
うなずいてやれば更に目を光らせて、早くと急かすように俺に視線を向ける。
可愛い仕草に高杉の方に手が伸びかけたが、なんとか目の前の仕事に意識を戻す。
ここでお預けなんかしたら、それこそ後で俺が『お預け』を食らうのは目に見えている。
相棒に氷を入れ、適度な速さでハンドルを回す。
綺麗な山形になるように、器を回し降ってくる氷を盛れば、夏の楽しみが出来上がる。
二つ分の大きな白山は、見た目からして涼しくなるのに十分すぎるほどだった。
「高杉、シロップどれ?」
「みぞれ」
「じゃあ俺いちご」
仕上げにそれぞれシロップをかけてやれば、
少しへこんだ紅白の山が出来上がる。
そこにストローを切ってスプーンにしたのをさせば、完璧な夏のご馳走だ。
待ちきれないといった様子の高杉の前に、真っ白い山を置いた。
ちょうど時計も八つの時間。
顔を見合わせて、両手をそろえた。
「「いただきます」」
暑さを忘れて、俺たちはひたすらに冷たい幸せを貪った。
それから後のお楽しみの時間は、頭痛と腹痛を訴えた高杉の介抱でなくなったのだけれど。
了
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