黒子と美琴
□L自慢の恋人…
2ページ/11ページ
黒子
『はぁ…初春…一つ貸しですわよ?』
初春
「ありがとうございます♪」
支部から直帰した黒子は、その足で
外泊許可を寮に申請するも、
急だった為、
翌日の許可は降りず
翌々日…テスト前日の許可をやっとの思いでもらった。
部屋について美琴に甘えながら、
事情を説明した後で
初春に電話する。
黒子
『あ、初春ですの?
申し訳ないですが、
明日の外泊許可は降りなかったので、
明後日1日しか行けませんのですが…』
初春
「え?連泊してくれるつもりだったんですか?
ありがとうございます♪明後日だけでも大感激ですよ♪」
電話している初春のすぐ近くに居るのか
佐天の
『ありがとうございます』
という声が小さく聞こえる。
黒子
『そうですわね…明後日は、テスト前日で学校は午前中だけですし、
風紀委員もお休みですから、
半日かけてみっちり勉強致しましょうね!』
何やら黒子は燃えている…
何事も
中途半端にできない性格なのだろう…
教える…と言った以上とことん教え込むつもりなのだ。
初春
「よろしくお願いします♪」
また小さく、佐天の
『お願いします』という声が聞こえた…
どうやらハンズフリーにしてある様だ。
声の様子から、
ひきつった笑いを浮かべているのが解る…
黒子
『では初春、また明日支部で。』
初春
「はい、本当にありがとうございます♪
また明日♪」
――ピッ…
美琴
「喜んでた〜?」
黒子
『ええ、大感激と言われましたわ♪
佐天さんは少し、ひきつってた様に感じますが…クスクス♪』
美琴
「フフッ♪よっぽど勉強すんの嫌なのね〜
…黒子、ちゃんと真面目にやってあげなさいよ?」
黒子
『もちろんですわお姉様!
教えると言ったからには!
佐天さんを補習には行かせませんの!』
美琴
「ん、…良い娘♪」
ナデナデ
黒子
『お姉様〜♪』
ギュゥ〜
友達の為にと善意をもって行動したせいか、
美琴はいつもより優しく、
黒子もそんな美琴に甘えていた…
だが、実は、
黒子の話を聞いた直後から、
心の中に、モヤモヤとした気持ちが生まれていた…
美琴
(黒子が居ない…か)
付き合ってから一度も、離れた場所で寝るという事は無かった…
いつも数歩歩けば黒子が居る…
そんな生活しか送って来なかった美琴にとって、
黒子が居ない夜…
というのは、考えただけで寂しくて堪らなかった。
黒子自身は勉強を教え込む…
という意気込みのせいか、
夜寂しいかなんて考えても居ない様だ。
美琴はそれを残念に思う。
もし、黒子が
『お姉様と離れて寝るのは寂しい』
と一言でも言ってくれれば、
「しょうがないわねぇ…じゃあ初春さん達に、私も行っていいか聞いてみなさいよ?」
なんて言って、自分も外泊許可を申請してみようなんて思うものの…
なかなか自分から素直には言えない。
寂しいから私も行く
なんて、照れ屋の美琴じゃなくても
恥ずかしい…
そんなのが笑顔で済まされるのは、
小学校低学年までだ
言える訳が無い…
かといって、
黒子に行くなとは思わない…
友人の為に、
楽しくもない事に時間を割く恋人を
誇りに思うし、
美琴自身も佐天が心配で、
黒子が行けばどうにかしてくれる…
という、期待も持っている。
自分がたった一晩、
寂しいのを我慢するだけだ…
それでなんの問題も無いのだ…
これからずっと一緒に過ごすなら、
数週間…或いは数ヶ月別々に暮らす事だってあり得る…
だったら今回くらい堪えなきゃ…
と、頭では思うのだが…
…
…
…
結局、誇らしい恋人には優しいまま、
悶々しながら、
夕食、入浴を済ませた…
美琴
「……………」
今黒子は入浴中だ…
今日は黒子は甘えん坊だ…
髪を乾かしてとドライヤーを手渡されるだろう…
そして一緒に寝たいと言い出す…
…
…
と思う。
そんな事を考えながら、黒子のベッドを眺める…
手には携帯…
待ち受けは、前にこっそり撮った、
黒子の寝顔…
ふと、視線を携帯に移す…
美琴
「…っ!!だぁ〜!やっぱ無理!
恥でもなんでもいいわもうっ!」
半ばヤケになりつつ
初春の携帯番号を表示させ、
通話ボタンを押す…
「断られたら断られたらで、諦めがつくでしょうし!」
ドキドキドキドキ
自分の鼓動を落ち着かせるため、
思った事をわざと声に出してみる。
数コール音の後、初春の声が聞こえた…
初春
『はい、もしもし』
「あ…こ、こんな時間にごめんね!?」
『大丈夫ですよ♪
なんかあったんですか?』
「…あ…いや……えっと…」
ドキドキ
『……?』
「あ…明後日!……わ…私も……行って…いい…かな…?」
『…はい?』