黒子と美琴A

□咄嗟の言葉程…
1ページ/7ページ


『お姉様〜ただいまですの♪』

「あっ!!」

勢いよくドアを開けて帰宅した。
ご機嫌な黒子の前で美琴は硬直する…

季節は真夏。

自分一人の為だけにクーラーを使うのは
いかがなものかと、
うちわで暑さを凌いでいたのだが…

ブラウスは第2ボタンまで外していて、
少し高い目線からみれば、
僅かに下着が見えるのも自覚している。

油断していた…

まさか黒子が、
こんなに早い帰宅をするとは思っていなかった。

(ヤ…ヤバいっ!!)

咄嗟にブラウスを掴んで肌を隠す…

黒子をみると、
入口に立ったまま、
黙ってその様子を眺めていた。

美琴が焦るのも無理はない…
黒子の前で普段、
全く人目につかない…つかせたくない部位の肌をチラつかせてしまっては、

次に予想できる
黒子の行動は一つしかない…

『お姉様の肌が!秘境が!ついにわたくしに心を開いて下さいましたのね!?』

なんて言いながら、
無理矢理にもう一度肌を見ようとするハズだ…

もちろん、見せるつもりは全く無い。

(近寄ってきたら電撃で…)

密かに攻撃態勢をとっていた美琴だが…

聞こえたのは全く想像していなかった台詞…


『お姉様…この炎天下の中、クーラーをお使いになりませんでしたの?』

「…はっ!?」

意外な言葉に一瞬思考が止まった。
しかし油断はできない…

(…これは…新手の作戦!?…一度油断させておいてから、襲いかかる気!?)

電撃の準備をしながら答える。

「部屋に一人なのに使うと思うと、なんかもったいないと思って…」

黒子の足が一歩踏み出した。

来るなら来い!変態行為は返り討ちにしてやるんだから!

と、一人勇んでる美琴に聞こえたのは、
またしても意外な言葉だった。

『エコ…というものですわね?お姉様、流石ですわ♪
でも、流石に今日は体調を崩しかねない暑さですわよ?』

と言いながら、
ベッドに腰かけている美琴の目の前を、
スタスタと横切って行き、鞄を置いてクーラーのリモコンを手にした…

「く…黒子?」

思わず声をかける…

決して抱きつかれたい訳では無いが、
こうも大きく予想を覆されると多少心配になる…

(もしかして具合悪いんじゃ?)

『はい?』

だが、黒子に異常は見られない…

「あ、いや…」


勘違い…?
と思いつつも少し動揺している美琴をみて、

黒子がクスリと笑った。

『解ってますわ、お姉様♪』

「…え?」

『ちゃんとエコを考えて温度設定しますの♪
ご心配なさらないで下さい♪』

「え?あ、うん。そうね、エコは大切ね、うん。」

別に意識してエコ活動をしていた訳では無いのだが…

少しだけ過ごしやすくなった部屋で、美琴は首を傾げる…

(別に…変わった所はないわよね…。
でもなんか…調子狂うなぁ…)


『あの…お姉様?
なにか黒子に聞きたい事でも?』

「ん?」

『あ、いえ…先程からわたくしを見ていますので…』

違和感を探るためだろうか…
気付いたら、ずっと黒子を眺めていた…

「あ、ごめん!別に何でもないよ!」

『そうですか…』

そう言って黒子は書きかけの書類に、
再びペンを走らせた

『何か聞きたい事があったら、遠慮なさらずに聞いてくださいまし♪』

美琴に背を向けたまま語る…

「うん、本当になんでもないから!
邪魔してごめん。」

『ウフフ…その様な邪魔なら毎日して欲しいくらいですわ♪』

「………」

(絶対に可笑しい…。
普段なら、用も無いのに見てたなんて言ったら…
興奮しながら飛び付いてくるわよね…?
やっぱり体調が?

いや…今なら…)

これは、一気に違和感をつきとめるチャンスだ…と、
キュッと黒子を見据える…

「黒子の事…みつめてたくて…」

少し恥ずかしい台詞だが言ってやった…

さぁ、どうでる?

これでも何もなければ、無理矢理にでも追究してやる。
大人しい黒子って、なんかちょっと不気味だから…

だが…

黒子は一瞬ビクッとして、
ワナワナと体を震わせて恐る恐る呟く…

『…おね…さま…』

手からペンがころげおちた…

(どうでる…?)

次に黒子がとる行動は…いつも通りの変態行為か、
はたまた静かにペンを握るか…

ゴクリと生唾を飲んだ瞬間、
視界から黒子が消えた…

「………え!?」


身動きがとれない…

(あぁ、黒子が後ろから抱きついてるからか…)

「…って!なんで抱きついてんのよ!?」

慌てて黒子の腕を振りほどく…

『何故って…せっかく相思相愛になれましたので…///』

「…はっ!?」

少しみつめたら相思相愛!?
どんだけぶっ飛んだ思考回路なのよ!?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ