黒子と美琴A

□変わらないもの…
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目覚ましが鳴って、
同居人に声をかけようとしたが…

「おはよ…黒子?」

『おはよう…ございますお姉様…♪』

顔が赤い…
それになんだか息苦しそうだ…

「…体調悪いの?」

『?よく…わかりましたわね…。
少し熱があるみたいですが、ご心配には至りませんの♪』

「いやいや…凄い辛そうだけど?熱は計ったの?」

『あ……いえ、本当に大したことありませんので…』

「駄目よ!ジッとしてなさい。」

体温計を取り出そうと救急箱を開くも…

「あれ…?」

無い。

同居人に目を向けると、咄嗟に視線を反らされた。

「……成る程ね。熱計ったんだけど思ったより高かったから、私に心配かけないように隠そうとしたんだ?」

『あ…その…』

なんで…
わかりましたの?

「で、部屋に居ると私に風邪をうつすかもしれないから、学校に行こうと?」

『……』

だからなんでわかりますの?

「で、何度?」

『……38度…』

「はぁ!?あんたバカじゃないの!?そんな熱あって学校行く気だったの!?」

『………』

「寝てなさいよ。」

『でも…』

『私以外なら、皆に風邪をうつしてもいいっての?』


『……いいえ。』

渋々とベッドに入ろうとする黒子…

「こらっ!」

『……はい?』

「やっぱり頭回ってないじゃん…
制服で寝る気?」

『……あっ…』

モタモタと着替えている黒子。
美琴はタオルを冷やしたり、
輪ゴムでペットボトルにストローを固定したりしている…

『お姉様…遅刻してしまいますの…』

着替えてベッドに潜った黒子が言う。

「私を遅刻させたくないなら、大人しく寝てて?」

ストロー付きのペットボトルを黒子のベッドに置く。
中身は美琴が作った薄い食塩水。

優しく髪をかきあげて、タオルをのせてくれた。
冷えたタオルが、火照った額を冷やしていく…
気持ちいい…

「いい黒子?ちゃんと大人しく寝てなさいよ?あと水分をちゃんととること!」

『…はい。』

時計…
みえてますか…?
もう走っても間に合わないのに…

「寝てればすぐに良くなるから…。」

優しい瞳で見つめながら、
髪を撫でてくれた。

『色々ありがとうございます。いってらっしゃいませ…』

「ん、じゃあね。」

ドアの前で振り返った美琴は、
心配そうに黒子を見つめていた。

美琴に心配かけたくないんじゃなくて、
自分がそんな美琴を見たくなかっただけかもしれない…



『ん…』

なんとなく目が覚めてしまった。
熱が少し下がったのか、少し体が楽だ。

体を起こして、美琴が作ってくれた食塩水を飲む…

時計を見る。
15時10分…

と、同時にあり得ない物を発見。

お姉様の鞄?

今朝行く時は持っていた…はず。

帰ってきてる?

でも…
学校の課程が終わるのは15時…

走ったって10分では帰れない…

やっぱり鞄を忘れて行った?

ガチャッ…

ドアが開く…

「あ、黒子起きてたんだ?食欲ある?」

美琴の手には、
大きめのトレー。

その上に
片手鍋…
器とレンゲ…

なんとなく、
お粥だと直感した。

『今はあまり…ありませんの。
それよりお姉様?
どうしてこんな時間に?』

トレーを机に乗せた美琴は、一瞬ビクッとした様に見えた…

聞かれて当然の疑問をされて、
少し困惑した様に言う…

「今日ホームルーム自習だったから、暇だし帰って来ちゃっただけよ?」

同じ学校に通っていれば、スグに嘘だと解る。
あの学校がホームルームを自習にするハズがない。


『お姉様すみません…それと…』

申し訳なさと…

『ありがとう…ございますの』

嬉しさが…

同時に黒子の胸に押し寄せる。

ホームルームをサボった美琴は、
イタズラがバレた子供の様に、
気恥ずかしそうな顔をしながら、
ポリッと頬を掻いた


再び布団に入る…

今しがた作り直してくれたタオルを、
優しく額にのせてもらう。

こんなに幸せなら…
ずっと熱が下がらないで欲しいと、

本当に少しだけ…

思ってしまう。

でも…
早く美琴と一緒に歩きたい…
早く美琴とじゃれあいたい…
もっと…

ずっと一緒に居たい


『お姉様…』

「ん?」

しまった…。
そんな事を考えてたら思わず呼んでしまっていた。

言える訳が無い…

熱は明日まで下がる気配がないのに、
ずっと一緒に居たい

なんて言ったら…

優しいこの人の事だ

ぶつくさ言いながらも、結局学校をサボって一緒に居てくれそうだ…

それは避けないと…

「どうしたの?何か欲しいものある?」

優しく問いかけないで下さい。

貴女が欲しい…

と言ってしまいそうになるから…

『いえ…何も…』


 
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