黒子と美琴A

□気まぐれ。
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『やっぱり映画に…しませんか?』

「………あんたが買い物に行こうって言ったんじゃん…」

突然立ち止まって呟いた黒子に、少し不満顔の美琴。
それも仕方ない。

プランが決まったのはついさっき。

映画を観ようと言った美琴の言葉に賛同はせず、黒子は買い物へ行こうと言い始めた。

なんでも最近、風紀委員の仕事が忙しくてあまり寝れてなくて、映画館の暗がりにいたらせっかくのデートで寝てしまうかも…

なんて、納得がいくようないかない様な理由を言う。

そんなに疲れてるなら遊びに行くのは延期しよう…なんて美琴が言えば、それは断固として拒否するし…

まぁ自分は先輩だし黒子に合わせてやるか…

なんて思ってショッピングモールへ向かった。

黒子の突然のプラン変更発言は、寮を出て20分程が経過した頃…

簡単に言えば次の角を曲がればお目当てのショッピングモール…

映画の提案は断られて、ならば買い物を楽しむかとスイッチを切り替えて、目的地が近づくにつれてその楽しみは増したというのに…



黒子の指は、とある看板を指していて…

プラン変更の理由を聞けば、


その看板に描かれていた映画が面白そうだからとか…

『すみません、最初から映画にすれば良かったですわね。』

「でしょ?全く…本当にあんたって…」

ぁあ…怒らせてしまったかな?
そりゃそうか、最初に映画を断ったのは自分だし。
それを了承して買い物にきたのだから…

ほら、やっぱり少し拗ねた顔をして…

「気まぐれだよね」

なんて言われてしまった。

気まぐれ…

気まぐれ…

頭の中で辞書をひいてみる…

気まぐれ。

移り気。
心変わりが早い。

気分によってスグに言動を変える。

うん。
自分にピッタリと当てはまる。

それは別に今回の事だけでは無い…

自分は随分と気まぐれな人間だと思う。

……

……

なんでも整った物が好きだった。
きちんと整頓されていない物を見ると嫌気がした。

いつからかな?

教科書や文房具が、無造作に机に置かれているのを見ても、嫌な気分にならなくなったのは…


花は花屋で買うものだと思ってた。
道に咲いた花なんて雑草としか思っていなかった。

いつからかな?

アスファルトからポツンと顔をだしてる野花がとても魅力的に感じ始めたのは…



規則的な物が好きだった。
決まった事や決まった時間。
それを守るのは当然だと思っていたし、仕事が長引いて門限を破るのも極力避けたかった。

いつからかな?

規則を破ってでも、優先したい物があって…門限を気にしつつも、その物事に没頭する様になったのは…


言動はいつも計画的だった。
不測の事態…
予想外の出来事に振り回されるのが嫌でいつも計画を立てて、計画通りに動いていた…

いつからかな?

予想外の出来事が起こっても、それを楽しいと感じれる様になったのは…



全ては貴女と…

貴女と出逢ってからかわった…

本当にあっさり…

いとも簡単に…

今まで信じてきた事や、考え方…

本当に簡単に変わってしまった。


出した物を出しっぱなしにして、それを指摘すると

「まぁ、そのうち片すから…」

なんて子供みたいな言い訳をするくせにちっとも片付かない机を毎日見ていたら…


道に咲いた花を

「可愛いね♪」

なんて笑顔で呟いた横顔を見てから…


遊ぶ事に夢中で門限を破って、罰則を受けながら

「でも、楽しかったよね♪」

なんて、苦笑しながら掃除する姿を見てから…


予想外のアクシデントに振り回されているのに、

「じゃあこれならどうだ!」

なんて…
不測の事態にも関わらず、気落ちもせずにハシャイでる姿を見てから…

本当にあっさりと今までの自分が崩れていった。

簡単に。

簡単に。

貴女と出逢ってから好きな物がたくさん増えた。

好きな物はたくさん増えたのに、嫌いな物が増えないのは何故だろう?

その時は嫌だと感じた事も、時がたてばそれは思い出にかわるから…

貴女と過ごした思い出に…

これから貴女と過ごす時間、気まぐれな自分はどれほど好きな物が増えるのだろう?


「…なにニヤついてんのよ…気持ち悪いわね…」

『いえ、なんでも…
わたくしは本当に気まぐれだなと思いまして…フフッ』

「言っとくけど気まぐれって褒め言葉じゃないわよ?」

『それくらいわかってますわ♪』

不機嫌な顔で貴女は振り返る…

「映画に行くんでしょ?罰としてポップコーン奢りなさいよ?」

あぁ…
今日から、ポップコーンを見ただけでニヤついてしまうだろう…

気まぐれな自分の、ただ一つ変わらない貴女への想いを抱きながら、私は駆け出した。

『もちろんです♪』
 

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