黒子と美琴A
□予約。
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『うわぁ〜ん!』
「…ん?」
試験前で学校が午前中で終わり、
寮で試験勉強をするもなかなか捗らず…
息抜きがてら、
恋人である黒子の顔を見に行っちゃおうかなぁ〜…
怒られるかな…
でも会いたいし♪
まぁ、黒子には暇潰しに来た、としか言えないけどね。
なんて考えながら、軽い足取りで支部に向かってる途中の事だった…
「どうしたの?もしかして迷子?」
私の進行方向…
道端で立ち尽くしてる子供を発見。
どこかの誰かさんじゃないけど、正直子供はあんまり好きでは無い…
でも、こうあからさまに困ってる子供の横を、何の気なしに通りすぎる事もできない訳で…
その子の目線までかがんで、なるべく優しい口調で問いかけてみる…
『グスッ…ウゥ…』
子供は私の声に一瞬ビクッとしてから、小さく頷いた。
まぁ、小さな子供が道端で泣いてる理由なんて転んだか迷子の確率が高い訳で…
「そっか、お姉ちゃんが一緒にお家まで連れてってあげるから大丈夫だよ♪」
子供の頭に、ぽんと手を置く。
途端に
『ほんとぉ♪』
なんて言いながら笑顔になる。
さっきまで大声張り上げて泣いていたのに、どうやら安心してくれたらしい。
「ほんとだよ♪」
そう言うとその子は
『えへへ♪』
なんて笑いながら手を握ってきて…
うん。
子供って可愛いかもしれない。
なんていうか純粋というか…
単純というか…
小学校低学年位の子供の言動を見て、なんだか黒子みたいで可愛いな…
なんて思ってしまう自分は相当な重症だと思う。
数ヶ月前の私が今の私を知ったら、一体何と言うか…
いや、今は毎日幸せなんですが。
『…お姉ちゃん?』
「あっ…ごめんごめん♪それで、お家はどの辺かわかる?」
イカンイカン…ちょっと思考が脱線していた…。
今はこの子を無事に家に送る事が一番の目的。
『だい8がっくっていうの!』
「第8学区ね?お家の近くに、大きい建物とかあるかな?」
『ん〜とねぇ……としょかん、っていうのがあるよ!』
「第8学区の図書館…あぁ!行った事あるわよ♪」
『ほんと?』
「図書館へのバスがあるから、それに乗ればスグよ♪」
『良かった♪』
「じゃ行こうか♪」
泣き顔から一転、まるで散歩を楽しむ様な笑顔の女の子と手
を繋いで歩きだす…
『わたし、お姉ちゃん欲しかったんだぁ〜♪』
なんて嬉しそうに笑う顔をみて、なんだか私も嬉しくなる。
「ねぇ、名前なんていうの?」
『わたしはね、あずさっていうの♪』
「あずさちゃんね♪私は美琴、御坂美琴よ、よろしくね♪」
『うん、みことお姉ちゃん♪……あ、ときわだい中学校っておじょーさま学校なんだよね!?』
「うん?」
『じゃあ、みことおねえさまだね♪』
「うっ…!?」
『どうしたの?』
お姉様…
美琴お姉様…
あぁ…そんな単語を聞いただけで黒子に会いたくなってしまうなんて、私はやっぱり重症みたい。
「い、いや…お姉ちゃんでいいから!お姉様だなんて大げさだよ♪」
不思議そうに私を眺める女の子…
慌てて答える。
お願い、お姉様って呼ばないで…
黒子に会いたくなってしまうから。
『わかったぁ♪』
…素直な子で良かった…
なんて、本人の知らない所で感謝してみたり…
―――
――
「もうすぐ図書館だからね♪」
バスの中で他愛ない話をしてる間に、目的地が近づく。
私の発言を聞いて、女の子はより一層嬉しそうに笑った。
出掛けた帰りのバスを乗り間違えて、第7学区まで来てしまったみたいだけど、
『今日は間違って良かった♪素敵なお姉ちゃんが出来た♪』
なんて言ってくれたから、すごい嬉しかった。
うん。子供って可愛いかも♪
表情がコロコロ変わるのについていけなかったけど、なんだかそれって子供の特権というか…
愛嬌なんだよね。
『あっ!!』
ぼんやりとそんな事を考えていた。
窓の外を眺めていた女の子が、驚いた声をあげたのにハッとした瞬間…
キキィーッ!!
と、けたたましいブレーキ音…
タイヤが地面に擦れる音を聞きながら、一瞬体が宙に浮いた気がした。
「…な、何!?あずさちゃん大丈夫!?」
『う、うん!』
私も女の子も、幸い頭をぶつけたりはしなかった。
緊急停止の理由を探ろうと、立ち上がって窓の外を眺めた。
スキルアウト
武装無能力集団。
そう呼ばれてる連中が、私達の乗っているバスを取り囲んでいた…
正確には、道路の至るところにスキルアウトがひしめきあっていた。
「…何事!?」
窓を開けて身を乗り出す。周囲を見渡すと大勢の警備員が確認できた。