黒子と美琴

□R美琴の日記…
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黒子
『お姉様♪お風呂お先に頂きました♪』

美琴
「わ!?あ、うん!私も直ぐに入るね♪」


急に黒子から声をかけられ、美琴は慌て一冊のノートを机にしまい、着替えを持って脱衣場へ…

(お姉様…あんなに慌て、いったい何を…?)

美琴が浴室へ入ったのを確認し、机の引き出しを開ける…
いけないと思いつつも、美琴の不自然な挙動が気になってしまったのだ。

ガタッ…

『こ…これは!?』

表紙に、美琴ご執心のカエルのキャラクターが大きく描かれた一冊のノート…
表紙上部に、可愛いらしい字体で
【diary】
と書いてある…

『…お、お姉様の日記帳!?』
ドキドキ

見つけてはいけないものを見つけてしまった気分だ。
美琴が日記を書いているなんて知らなかった…
愛してやまない恋人が書いている日記なんて見つけてしまっては、どうしても内容が気になる…

しかし、人の日記を盗み見るというのは第一級のプライバシーの侵害とも思う。
例えそれが、お互い親密な関係にあるとしても、だ。

『…む…ぅう…』

日記帳を手にしたまま、葛藤が始まる…

見たい…
けど…

見てはいけない…


欲望と道徳の間で揺れる…

『…見た、い…ですわ…でも…私は…』

自分は正義と秩序を守る風紀委員なのだからと、自分に言い聞かせて、机の引き出しへとノートを戻す。
風紀委員以前に人として当然の行為なのかもしれないが、黒子にとっては一大決心だった。

付き合う前の彼女であればなんの躊躇もせずに開いたであろうが、美琴と親密になっていくにつれ、より強まった信頼関係を壊したくない…
例え日記を盗み見たのがバレなかったとしても、だ。

美琴を裏切る行為はしたくなかった。

「黒子、出たよ〜」

『ウフフ…お姉様、今日も素敵ですわ♪』

「はいはい、ありがとう!」

勘違いかもしれないが美琴はいつもより、若干早く風呂を上がった気がする。

もし本当にそうだとすれば、それはやはり挙動が不審だった自分の、日記の存在がバレてしまったのではないかという不安からだろう…

美琴にとっては、
盗み見られる…

それ以前に、
日記を書いている。

その行為自体がバレてしまうのが恥ずかしい訳で…

しかし黒子は日記の事には触れなかった…黒子の中では、元から日記は無かった事にしたのだ…

さもないと、今すぐにでもその禁断のページを開いてしまいそうで…

美琴ととりとめのない会話をして、眠りにつく頃には既に日記の事は頭の片隅に追いやられていた。




翌日。

「黒子ごめん!私今日用事あるんだ!」

『用事ですの?』

「うんちょっとね…せっかく非番なのに一緒に帰れなくてごめんね?」

『よろしければご一緒しますが…』

「ん〜…いや、いいよ!悪いし、完璧私用だから。本当にごめん直ぐに帰れると思うから、寮で待っててくれる?
…それとも…黒子も出かける用事とか…ある?」

『いえ、わたくしは仕上げたい書類もありますので寮でお姉様の帰りを待ってますわ♪』

「本当?絶対寮で待っててくれる!?」

『え、あ…はい。』

(なんでそんなにムキに!?)

「良かった♪じゃあ小一時間で帰れると思うから、絶対寮で待っててね♪」

『解りました♪』




(さて…どうしたものでしょうか…)

昨日の今日で、忘れきれていない日記の存在…
美琴の不在…

気を紛らわせたくても、寮で待てと言われてしまっては、
気にならずにいられない…

(小一時間で帰ると言ってましたわね)
ゴクリ…

書類に手をつける事もできず、ただただ時計を見つめる…
今は一刻も早く美琴に帰宅してもらうのを願うだけだ。

さもなければ、美琴の机の引き出しを開いてしまいそうだ…

しかし…

…チク…タク…
…チク…タク…
…チク…タク…

こういう時ほど、時間が進むのは遅く感じるもので…
なかなか進まない秒針に対して、黒子のイライラと欲望は加速していく…

ついに…

(も、もう我慢なりませんのっ!!)

『お姉様!ごめんなさいまし!…1ページだけ…』

引き出しを開けると昨夜と同じ場所に一冊のノート…
堪えきれない誘惑と道徳の葛藤の末、1ページだけ日記を盗み見る事に…

しかし…

その判断が過ちだった…

『…これ…は…』
ドキドキ

愛しい人が、決して人に見せる事のない想いを可愛いらしい文字で綴った日記…

そんな誘惑の塊を1ページでも開いてしまえば、続けて読みたくなってしまうのは当然で…

ましてやそんな日記の内容が、

自分との親交の事…

であれば、そんな思いはとめようも無いわけで…

 
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