黒子と美琴A

□変わらないもの…
2ページ/4ページ


「何も…って…。呼んだじゃん。遠慮しないでいいから、言ってみなさいよ?」

『………』

言える訳無いでしょう…

たぶん、
貴女が欲しい…
なんて言ったら、顔を真っ赤にして、

「バカな事言う元気があるなら、もう平気ね!」

なんて言い放って…
自分も『はい』なんて言いながら笑ってそれでおしまい。

それで済むと思うんだけど…

そういう事は、
いつもの様に言ってる事だけど…
実は意外と照れくさいんですよ?

好きな人に想いを伝えるのって…

いつも言葉にできるのは、
ただ、もう自分の胸にしまいきれない程大きな想いだから…

今日は熱のせいか、
いつもよりちょっとだけ冷静。
だからなんとなく…

いや、
はっきり解る…

恥ずかしくて…
言えません。


「黒子?黙ってちゃ解んないでしょ!?」

さて、
どうしたものか…

どうやらこの人は、
自分がして欲しい事があるのに、
遠慮して言わない…

と、
勘違いしている様で

いや、
勘違いではないんだけど…

そんな自分に少しイラついてる様子。

この様子だと、
ある程度の事を言わないと納得しないだろう…

沈黙が長引いた分、
重い話しにしなければ…
ただ、食塩水のおかわりが欲しい。
なんて言っても、
かいがいしく作ってくれながら、
「他にあるでしょ」
と聞かれるハズだ。

確かに遠慮するにしても、食塩水一つ頼むのに、ここまで沈黙を保つハズが無いのだから。


『今朝…』

「ん?」

やっと口を開いたのをみて少し笑った。

自分が頼れないんじゃないかと思わせてしまったみたいだ。

心配しないでも、
いつも…
貴女の存在に救われていますよ?

『今朝はどうして…
わたくしが具合悪かった事や、学校に行こうとした理由がわかったのですか?』

これならたぶん大丈夫だろう…
何か聞かれても、
聞きにくかったと言えばいい…

それに…
本当にどうして解ったか、知りたかったのを思い出した。

気になる。

もし…
自分の仕草とかで解ったのなら、
今後の行動には、
一層注意をはらわなければならない。

心配…
かけたくないんです

「そんなの、見てれば解るに決まってんじゃない。」

あっさり言われた。

なんでそんな解りきった事を聞くの?

とでも言いたげに…

「顔赤くてふらふらしてて、言葉もたどたどしかったし。」


そう言われてみればそうか。
熱が高いのは、
少しみれば解るかもしれない。

でも、
聞きたいのはそこじゃなくて…

「黒子が熱あるの隠そうとしたり、学校に行こうとした理由が解ったのは……」

やっと核心が聞ける


…と思ったのに…

「なんとなく、そうかな〜って?」

……いやいや…

なんとなく。

じゃ、次回気をつけ様がありませんが…

「黒子が自分の事でなんか隠したり、
無理するのって、大概私の為なのかなってって思って…」

そう言って美琴は視線を反らした。

少し顔が赤い。

自分で言って、
なんとなく照れくさかったのだろう。

黒子は黙って美琴を眺めていた。

「……そしたら本当にそうなんだもん。
呆れちゃったわ。」

小さくため息をついてから、また視線を戻した。

もう、いつもの表情に戻っていた。

「まぁ、これだけ一緒にいれば、
解って当たり前なんじゃない?」

言いながら、
机に向かった。

鍋から少しだけ、
お粥を器に移している。

『………』

当たり前…ですか。

たぶん、貴女の言う当たり前は、
当たり前じゃないと思いますよ…?

一緒に居たって…
注意をはらわなければ気付かない事ですから。

熱に負けたくなくて学校に行くのかな?

その程度の認識で十分なハズですが…

お粥を持ってきてくれた美琴に言う。

『わたくしの事…
何でもお見通しなんですわね…』

「当たり前でしょ?
ほら、食欲なくても少し食べな?薬買ってきたから。」


簡単に言ってくれる

その、
“当たり前”
という言葉に、
せっかく下がり始めてた熱が、また上がってしまいそうなんですよ?

上半身を起こして、
美琴からお粥を受け取った。

『大好きです。』

やっぱり…
この気持ちは胸にしまいきれないです。

突然の不意討ちに、
美琴は黙って顔を反らした。
やっぱり顔が赤い。

照れてくれるというのは、少し期待してもいいんですか?

それとも…
誰に言われてもそうなるんでしょうか?

出来れば、前者であって欲しいと思いながら、お粥を口に運んだ。

「……おいしい?」

『はい、とても♪』

「…そう。」

呟いて、
美琴は買ってきた薬を取りに行った。
その後ろ姿は…

少し嬉しそうで…

いつも以上に思った

本当に…
本当に優しい人…

貴女が大好きです。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ