リハビリ

□甘えんぼう。
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「ッ、…」

何も知らないでいてくれる後輩が。

何も聞かないでいてくれるルームメートが。

何も言わないでいてくれるパートナーが。


たった一つ、私に告げた事。


同じ音。…同じ、
“鼓動の音”
が私にも響いているという事。

それは、なんでもないただの会話でありながら、遠回しに…

“命を粗末にするな”

という、黒子なりのお説教。


救う為に、死のうとした。
死ぬ事で、救おうとした。

それが正しい判断だったのかは、今、生きている私には解らない。

何故黒子が、私が死を考えたかを知ってるのか。
そんなのは愚問だ。

いつだって、この後輩には私の全てを見抜かれている。

見抜かれて…、そしてそれでも何も言わずに居てくれる。


それがやっぱり、嬉しくて、申し訳なくて。
そんな感情と驚きとで、言葉に詰まった私を。
もう一度。

無言で、包み込む様に優しく、胸に抱き寄せてくれる黒子。

途端に、黒子の鼓動が耳を、心を打つ。
それに合わせるかの様に、今も、私の内側から小さく響く鼓動。


色々混ざって。ぐちゃぐちゃになって。
理由も解らず目頭が熱くなる。

泣いてるのを黒子にバレたくなくて。
声を殺して、そっと黒子の胸に顔を押し付ける。

甘い香りと、優しい温もり。
身体の力が抜けていく。

黒子は私の髪を優しく撫でながら、

『黒子は寂しい想いをしましたの。だから今夜は一晩中、お姉様を離しませんの。』

小さく、優しく。そう呟いた。


「…今日だけ、…だからね。」


『はい。』

やっぱり黒子には全てお見通しみたいだ。

泣いてる事も。
眠れない事も。

そして。



「…スー…スー…」

『…眠られましたのね。…お姉様。』

本当は私の方が。




『良い夢を。』



甘えん坊だって事も。
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