EiBel

□V. 全てが凍る銀世界
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月明かりに青く照らされた銀世界。あたり一面を埋め尽くさんと積もった、静かな雪たち。

葉をつけたままそれを装う針葉樹の枝の上で、一つの影が小さく息を吐く。暖かな息が、冷たい空気の中で白く凍りついた。

そっと目を閉じた。長いまつげに、小さな氷の粒子が煌めいている。

まぶたの裏に描くのは、まだ見ぬ世界。
決して訪れることのない、失われた季節。

花が、木々が、全ての緑が。暖かな日差しの下で煌めいている。小鳥たちが、幸せの歌をうたう。

お伽噺のように、聴かされてきた。
夢のように、恋い焦がれてきた。

それは

春。

空想で描かれた世界は、それだけで暖かすぎて。
再び開いた目に飛び込んでくる月明かりが、やけに冷たかく感じた。

抗うように影が歌いだす。
美しい声が、夜に流れていく。


春よ。暖かい祝福の光よ。どうか我らに降り注いで。
どうか、どうか…
人々の凍てついた心を

溶かして。
 
 
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