EiBel
□U. 繰り返されるは緋色の悲劇
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無事カルフィナ国を出発したシリオたち。
旅立ってから四日目、彼らは順調に次の国へ…
着いていなかった。
周囲を見渡せば、建物どころか人の影すらなく。辺りを取り巻くのはひたすら木、木、草。そして時折魔物たち。
「失せろ雑魚があぁっ!!」
いつになく乱暴な言葉遣いで、立ちはだかった魔物の頭を最大化したハンマーで叩き割る。
一言で表せばやけに爪が長い一つ目の小さな熊。度々人間を襲っては死に至らしめる凶暴な魔物も、苛立ったシリオの前ではぬいぐるみの熊同然である。
粉砕された頭の中身が血と共に飛び散り地面を濡らすその様は、とてもではないが正視できるものではない。
しかし当の本人は気にせず、ハンマーに付着した血を振り払う。
「完全に悪の絵面だな」
失礼な、しかし的を射た発言が隣りから聞こえる。
キッと効果音が鳴りそうな勢いで睨みつければ、いつもの人を喰ったような笑みを浮かべるリギルトの姿が。
シリオの視線に気づき、わざとらしく肩をすくめる。
「おぉ。怖い怖い」
「…うるさいよ、誰のせいだと思ってんの!」
こんな人並みはずれた獣道を歩く羽目になった元凶は悪びれる様子がなく、むしろこの状況を面白がっている。
あぁ、そもそもこの愉快犯の言うことを信じた僕が馬鹿だった。
後悔と共に二日前のことを思いだしながら、シリオは深いため息をついた。