セクゾなティーチャー

□それでも先生
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桃色がひらひらと風に舞う新学期


期待に胸躍らせる新学期





世間が浮つき踊り出すこの時期に、私も負けず劣らずの高まりをみせている




教師となって早3年。仕事に一生懸命になっていたこの3年間は、辛いこともあったが生徒の笑顔の横にいることがてできて、充実したものになった。そして四年目、私は再び新たな子供たち、また、教師として本校に来る、新たな仲間との出会いに期待を募らせた


今年度は、大学を出たばかりの、教師一年生の男の子がくる、という情報は入っている。緊張していた3年前の自分を思い出し、少し笑みが溢れでた。先輩としての意識、仕事の有能性、そして規律、それぞれにおいてまた自分も奮起させなければならない





もちろんそんな充実した日々の中、あの第一印象が最悪だった男の存在なんて忘れているわけで。私の頭の中には名前の記憶すらなかった































「今年度からこちらの学校に赴任となりました、中島健人と申します。今年から教師として4年目になります。専門は数学です、よろしくお願いします」
























あの屈辱的な思いをしてから3年






特に思い出したりすることはなかったのに








今突然フラッシュバックした








と、同時に私の顔はきっと今、桜のピンクとは対称的に青ざめているだろう



名前にはピンとこなかったものの、あの笑顔には見覚えがあったのだ。そして、あの声も、周りの女性達のざわめきも






先生って、処女?


のフレーズが脳内で3回ほどリピートされた








「今年4年目ってことは、無名先生と同期か、この学校のことを色々教えてやってくれ」




ぐわっとみんなの視線が私に注がれた。うわぁ、見ないで、見ないで、そして私とその男に関わりがあるという意識をもたないで、私は知らない人を貫いていこうと思ったのに


ちょっと無名先生何よ〜、隅に置けないわね〜とか言ってるそこのおばちゃん先生たち…そういうのじゃないから、断じて私は関係ないから、隅に置けないもなにもまだ知り合いとは一言も言っていない




あの男はお得意の笑顔をみんなに振りまき、挨拶を終えたため一歩下がった。奴の笑顔に、おばちゃん教員達から若めの女性教員までがきゃーとざわめき、頬を赤く染める



次に挨拶に控えていたのはもう少し若めの男の子。ビシッとした背筋、硬直した手から、その男の子の緊張が伝わった。きっと、あの子が今年度から先生になる、一年目の男の子だ、ということは誰が見ても一目瞭然だった





「今年から、教師になりました、佐藤勝利と言います、専門は体育です、よろしくお願いします」




よろしくお願いします、と言った後に、何度かペコペコとお辞儀をする佐藤くん。なんともそのお辞儀が初々しい。教頭が、佐藤くんは初任だから、色々わからないことだらけだ、周りの助けが必要になるからみんな助けてやってくれと付け加えをした


その紹介があると、佐藤くんはまたペコペコと何度か会釈をした。周りからは、え、佐藤くんも、中島くんと同じくらいイケメン…という声があがっている。確かに、佐藤くんは稀にいるレベルではないような…綺麗な顔立ちをしていた。背は少し低めだが、またそこがおばさんやお姉さんの心をくすぐるのだろう





「佐藤くんの教育係は無名先生にお願いしようと思うから、無名先生、よろしくな!」




はっはっは!と教頭のいつもの特有の笑い方を炸裂させて、私に荷を投げた。えぇ、そんな話は何も聞いてなかった…と教頭の方を見たが、教頭は変わらずの笑顔で佐藤くんの緊張を解こうと背中をバシバシと叩いていたため私の視線などには気付かない


佐藤くんが教頭に叩かれながらも教育係である私に向かってペコ、と控えめなお辞儀をした。確かに、美しすぎるくらいのお顔だ、ということに気を取られてお辞儀をし返すのが3秒ほど遅れた





今年度から赴任してきた先生の紹介が終わり、各々席へと戻り山ほどある新学期の準備を始めた。私も誰が置いてくれたのかはわからないコーヒーと、チョコレートに口を付け、よし、今から仕事だ、と切り替えスイッチをオンにしたところ、何故か斜め前から視線を感じた











『(えっ…なんか見られてるんですがっ…)』





視線の先には例のあの男。私と目が合うなり、ニコッと笑い、







「同じ四年目なんですね、よろしくお願いします、先生」






と、言った




















奴が私のことを覚えているのかなんて、わからない





でもやっぱり、三年経っても私たちは、先生、という呼び方の距離感から縮まることも遠ざかることもなかったのだ




























To be continued...
 

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