セクゾなティーチャー
□君という人
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「ペアチケット…二枚」
ベッドの上に仰向けになりながら、チケット二枚を眺める
俺の好きな恋愛ものの映画だ
同じ学年の先生に、中島先生恋愛もの好きって言ってたから、あげる、と言われ、ありがたくもらったものだ
「…誰を誘おうか、」
なんて考えると、何故かふぅ、とため息が出た
俺がため息なんて珍しい
普段なら適当に男友達を誘って観に行くか、一人で観に行くところだ
でも、
「無名さん…映画とか観るかな、」
脳裏に浮かんでくるのは彼女の存在だった
先生って、処女?
俺が彼女に初めて話しかけた言葉はこれだ
三年前、教師になりたての頃のこと
もともと本当に処女かどうかを確かめたいわけではなかった
そもそも研修の班が同じだっただけで、話したこともなかったし、無名さんから話しかけてくることもなかった
だけど、俺が研修中に自分から話しかけた女の子は、きっと無名さんだけ
俺はいつも女の子に常に囲まれていた記憶がある
そんな中で、無名さんは俺と目も合わそうとしなかった
不可解だった
何でこの人は俺に興味を示さないんだろう?今までそんな女の子いなかったのに、なんて、自意識過剰なことを思ったことを覚えてる
でも、
俺は見た
『大丈夫?緊張しなくても大丈夫だって!ね!がんばろ!』
彼女が人に優しく笑っているところを
その時に気付いた
あぁこの人、人の中身を見てるんだって
あの子の気を引きたい
それが次に俺が思ったことだった
「ふっ、懐かし…」
ベッドの上で白い天井を見つめながら昔のことを思い出していると、ふっ、と笑みがこぼれた
この笑みは、気を引きたいと思った自分が彼女に告げた言葉の非常識さを悟って出た、自嘲じみた笑みなのだけれど
俺にとっても、忘れられない日になった
そしてこの学校に来て彼女を見つけた時、胸が高鳴ったのを覚えてる
何の感情かはわからないが、あぁ、会えた、と思った
それからはまた、あの笑顔を目で追うようになってしまった
「あー、でも断られそうだな…」
そして、彼女のことに対してだけは何故か弱気で慎重になってしまう自分に、モヤモヤ
俺らしくないんだよな、こんな気持ちになるの
女の子はみんな同じ、と思ってた俺の固定概念を崩したのは彼女
そんな彼女の魅力に惹きつけられているのは事実だ
「とりあえず、誘うだけ誘ってみるか…って、俺無名さんのライン知らないじゃん!」
そうだ、ただの先生、から、中島先生まで距離を縮めたものの、連絡先一つ知らない
「菊池なら知ってるみたいだけど…」
釣りに誘う時、ラインしてた
まぁあれは誘うというよりも強制だったが
「明日、自分で言おう」
明日もまた、話せるのが、楽しみだ
俺はペアチケットを学校の鞄の中に入れ、部屋の明かりを消した
To be continued...