セクゾなティーチャー

□動く
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「無名さん、おはよーございまーす」


『菊池くんおはよ』





いつも通りの月曜日、私は隣のデスクの菊池くんにいつも通り挨拶をする



斜め前のデスクには、奴の姿があった





チラッと見ると、しっかりと目が合う











『…中島先生、おはよう』


「おはよう、無名さん」











ただ一つ、いつも通りでなかったのは、奴に私から挨拶をしたこと





横にいる菊池くんも、え?と、キョトンとした顔を一瞬見せた



















「…2人、なんかあったんスか?」


『いや、特になんかあったとかじゃないけど!』







そう聞いてくる菊池くんから目をそらし、当たり障りのない返事をする




それに対しての菊池くんの返事はなかった


彼は勘のいい人だ


もしかしたら何か考えているかもしれないが






「無名先生ー!ちょっと来てくれー」





職員室の前から教頭の声がし、私はそちらへ足を運んだ






















「…中島、なんかご機嫌じゃん」


「わかる?いいことあってさ」


「好きな女でもできた?」


「はは、お前にはやっぱりお見通しだよな」





中島はそう言うと笑顔を俺に向けた



昔から、こいつの考えてることは手に取るようにわかってしまう









「ふーん、よかったよかったー」


「いや、思ってねぇだろ!」




気のせいではないだろう中島のツッコミのテンションもいつもよりも高い気がする




だがしかし俺の気持ちはそんなに高揚していない






ご機嫌な中島を横目に、俺は一限目が社会の授業である無名さんのクラスに行った
































「無名さん今ちょっといいすか?」


『あ、菊池くん。うんいいよ?』






放課後の職員室


無名さんはいつものようにカフェオレを飲みながらデスクワークをしている






「今度のテストなんすけど、作ってみたんで問題見てもらってもいいすか?」


『わぉ、菊池くんが私に教えを請おうなんて珍し!』


「いや、中学生と同じくらいの知識量の人に一回解いてもらいたいなーと…」


『あー!またそうやって意地悪言う!』





意地悪、と言って頬を膨らませながらも俺の問題を解き始める無名さんはやっぱり可愛いから、いじめたくなる









『んー、ここはさ…』










でも、真剣に考えるときは考えてくれる



優しい先輩だ









横から見ると肌が白くて綺麗で、髪を耳にかける仕草がなんか大人っぽくていい













『菊池くん?聞いてる?』


「え、あ、はい」


『何その返事、聞いてなかったでしょ〜!』





少しむすっとしながらも、笑い飛ばしてくれる無名さん



俺、やっぱり2年前からずっと、この人のことが好きだ














「菊池、無名さん」


『あ…中島先生、勝利くん』


「…中島と勝利」





俺が少し声を比較して名前を呼ぶと、中島は、明らかに嫌な顔するじゃん!とツッコミを入れた

















「どした?」


「いや、風磨くんたちはまだ帰らないのかなーと思って…」


「職員室、今日後は俺らだけだよ」


『えっ!?ほんとだ、全然気付かなかった!』






職員室を見渡して見ると、確かに残りは4人



月曜だし、みんな早く帰ったんだろうなぁ







「帰るなら、戸締りしちゃうし、帰ろーぜ?」


『あ、うん「あー、中島と勝利、気使わせて悪かったな、俺らもうちょっとしたら出るから、先帰ってて?」






俺がそう言うと2人は少し戸惑った農家顔をしたが、わかったお疲れ、と行って職員室を後にした



何だか俺らの様子を気にしていたようだから、中島あたりは何かしら思ってるだろうな




























『…え?よかったの?』


「準備するの待っててもらうのも、悪いし」





一番きょとんとしていたのは無名さんだったようだ








「無名さん、テスト見てもらって、ありがとうございました」


『い、いえ!でも何で私?社会でもないけど…』


「無名さんと、話したいし」


『え』







無名さんを見ると、俺の言ってることの意味を分かっているのか分かっていないのか、耳を赤くして少し下を向いている









「この前、嫉妬深いって言いましたよね?」


『え、う、うん…言ったけど…』


「今日の朝だって、中島と仲良くしてるから妬きましたもん」


『…えぇっ、ど、どういう意味…』










菊池くんは私に向き合って、視線を逸らさず、左の口角だけを少し上に上げた











































「俺、前からずっと、無名さんのことが好きです」



































その瞬間、ふわっと、体が菊池くんの香りに包まれた



菊池くんの筋肉質な腕が私の背中に回って、抱きしめられていることをようやく理解したのが5秒後




























「…無名さん、好き」










私を抱きしめながら、菊池くんがもう一度、耳元で囁く









私の頭は真っ白だ









いつもの通り、からかってこんなことをしているのか、本気で言ってるのかが読めない







でも流石に菊池くんも、こんなからかい方はしない気がする




じゃぁ彼は、本当に私のことが…す、好き…なの、?





やばい、心臓が大きく跳ねて、今にも菊池に聞こえてしまいそうだ


















『っ…き、菊池…く、』


「…気持ち、知っておいて」


『その、私のこと…本当に?』


「プッ、こんな場面で流石に嘘つかないけど、」







菊池くんは少し笑うと、ゆっくりと体を離した


















『えぁっ、あ、あの…』


「あはは、茹でダコみてー」


『ちょっ、ゆ、茹でダコって!』







そりゃぁいきなり抱きしめられればそうもなるよ!


















「驚きました?」


『っ…も、もちろん…』


「今は、俺の気持ち、知ってもらえるだけでいいですから」


『え…』


「無名さんを、振り向かせてやりますよ」











そう言うと菊池くんは綺麗に笑った





























物語が、動く、気がする































To be continued...

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