旧拍手文

□きみだった
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愛する人は死んでしまった


なのに…


こうして今も生きている自分が


どうしてなのかわからなかった




失った痛みは果てしなく


後悔を拭う術も知らなくて


時が過ぎる程により深く


身を苛む喪失感と虚無感に


体ではなく心が


密かに静かに朽ちていく自分を


どうすることも出来ずに


ただ苦しみを抱えながら


いつか終わる事を夢見ていた




刑事として


職務に殉じて終われたら


自分を恥じる事なく逢いにいける




そんな甘美な死の誘惑を覚えながら


それでも無様に生き残る自分は


滑稽で哀れでならなかった




身の安全など顧みず


任務と称して無茶ばかりを繰り返して


それでもどうして俺はまだ


生きているのか―――…




いくら考えても


答えを出せない俺の前に


現れたのはきみだった




呆れるほど真っ直ぐで


呆れるほど優しくて


呆れるほどありのままの


無防備なきみが


俺の心に跡を残した




その跡が少しずつ広がる度に


俺の心の空洞を


きみが埋めた




それから俺は


『ただ生きることの意味』を


問いかけるのは止めたんだ




そばにいたいと心が震えた


それは何より大切な―――


ただ独りのきみだった



〜end〜



今回は後藤さんです


これは最初にタイトルが決まって、『きみだった』って言葉でしめようと決めながら書きました


詩を書くようなイメージで書いたので、お話というよりモノローグに近いです


本当は、お話として書くなら、途中もっと複雑な心理が入るんですけどね


そういうのをちゃんと書くには長編じゃないと無理なので、ここでは単純に、分かりやすくまとめてみた感じです


少しでも気に入って頂けたら幸いです

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