黒バス

□木吉と
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かわいくて仕方がない後輩ができました。


何がかわいいって、…何だろう?
背もデカイし目つきも悪い、生意気だし敬語使えないし大食いだし……

そうだな、強いて言えば、全部だ。
今挙げた全部、そこがかわいい!




「うまいか? 火神」
「んまい」
「そーかそーか!」
「ちょっ、頭触んなっ!」


オレが頭をわしゃわしゃ撫でるといつも決まって火神はこう言う。素直じゃないなあ、本当は火神だってこうされるの好きなのに。

少し不貞腐れた様子で、それでもオレの隣から離れずにずっと食べ続けてる火神はいつ見ても本当にリスっぽい。
やばいなあ…オレ相当末期だろ。こんな仕種のひとつひとつが、かわいくてかわいくて仕方がないなんて。
もしかしたら火神はオレのことなんて『食べ物を与えてくれる都合のいい先輩』ぐらいにしか思ってないかもしれない。それでもこんなにかわいい火神の姿を間近で見れるならいい、そう本気で思ってるオレは、やっぱり相当末期なんだろう。



「じゃあ行くか、……ってオラ火神! お前いつまで食ってんだ!」
「ん?」


日向の号令に、まだ口をもごもごさせている火神の代わりにオレが声を出す。
ああ、そう言えば今は合宿中で、今夜泊まる宿に向かって歩いてる最中だってこと忘れてた。
日向だけじゃない、メンバーそれぞれが火神を呆れた様子で見ている。
それでも気にせずに黙々と食べ続けている火神にやはり代わり、オレがみんなを宥める。


「まあまあいいじゃないか、嬉しそうに食べてるし」
「よくねぇよ! つかオマエそれ以上甘やかすな! 食いモン与えんな!」
「え? 日向なに怒って、…あ、ほら火神、コレも食うか?」
「うん」
「言ってるそばから物与えんなァァァ!!」


試合中でもないのに何故かクラッチタイムに入った日向を横目に火神が食べ終えたゴミを引き受ける。
甘やかしてるつもりはない。だけどあまりにも嬉しそうに食べるもんだから……つい色々と買い与えてやりたくなるんだ。まあ、母性本能ってやつだ。…ん? 男にも母性本能ってあるのか? …まあいいか!


「いやいやだからやるなら他所でやってくれ! それ活動費だから! バスケ部の金だから! お前らのじゃないから!」
「お、アレもうまそうだぞ火神!」
「食いたい」
「よし、買ってきてやるな」
「だから話を聞け、っつか財布返せェェェッ!!」


だって今日の会計当番オレだもーん。
なんて、らしくなく浮かれて語尾が伸びてしまうほどにオレは火神に夢中だ。


「はい、あーん。なんつって…」
「あー」
「……!」


だってしょうがない。
ほら、雛鳥のようにその口に食事が放り込まれるのを待っている、たまに見せるこーんな素直なところが、


最高に、かわいいんだもん!






「もん、じゃねェェェ!!」



END
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