復活

□その他と
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いつも不安だった。

自分は自分、

そうわかっていても。










ずくずく、
胸が痛くて仕方ない。

刺されてないし撃たれてもいない、

なのにぽっかり穴が開いたみたいに疼くんだ。


血は流れない。
涙も出ない。

だけど痛い、
痛くて苦しい。



オレは知ってる、この痛みの正体を。
そして、どうしたら治るのかもわかってる。

だけど、こればっかりは自分の意思でどうこうできるモノじゃないから。


オレには治せない、
治すために、呪文を唱えることしかできないんだ。





「…ねぇボス、ジル殺す時どう思った?」
「…どうした急に」
「んー?」


ずくずく、
胸が痛い。
呪文を唱える声も震える。

大好きなボスといても、あの日からずっと止まることのない、痛み。

ボスが、ジルを葬った、あの日から。


あの時ボスは、何の躊躇いもなくジルを殺した。
アイツは憎むべき敵で、それはオレもわかってる。実際死んで清々したし。
でも、


…何だか少し、こわい。

だって認めたくないけどオレとジル顔そっくりじゃん、
オレだったら、もしもボスそっくりの奴が出てきたらやっぱ躊躇うし。


その行動の裏に隠された事実を知るのがこわい。

もし、ボスはオレのことどうも思ってないから躊躇わなかったんだとしたら、



ああ…もう。
思い悩むなんてらしくないのに。

胸の奥が痛い。
あの日から、ずくずくが止まらない。


助けてよ、ボス。
ボスにしかこの痛み救えないんだから。


お願い、届いて。

呪文の言葉───







「ベルはベルだ」

「、……え?」
「ベルはベルだろう、だから何の問題もない」
「………」


耳に届いたボスの声。
それは、言葉以上にすごく優しくて。


口には出さないけど、オレの葛藤に気付いてくれてたんだ。
オレがいちばん欲しかった言葉、ボスはわかってくれていた。



「…何を笑っている」
「しし、ボス大好き」


嬉しくて、大きなボスの腕に飛び込んだ。

ボスの大きな手のひらが王子の髪を優しく撫でる。
大空の、すべてを包み込む抱擁。



いつの間にか、ずくずくは消えていた。





ありがとう、ボス。


大好きだよ。



fine.
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