黒バス

□その他と
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彼は、彼が好き。
見てればわかる、女のカン、だけじゃないもの。私の方がずっとあなたを見ていた。ずっとずっと、最初にあなたに恋心を抱いたのは間違いなく私。なのにいきなり現れて、あなたの視線や心、全てを奪っていった彼。ずるいよね、同じ男だからって、私より深く深くあなたの心に踏み込めるんだもの。私とあなたの間にある壁なんて、彼とあなたの間には存在しないの。ずるい、私だってそこにいきたい。もっと近くで、もっと深くあなたを愛したいのに。なのにあなたは、女ならよかったのに…って呟くの。女なら、彼と付き合えるのに? 女なら、彼と結ばれるのに? そんな願い、お門違いだよ。だって知ってる? 一般的には男女の方が結ばれるんだろうけど、彼は、あなたが大事なのよ? 男とか女とか関係ない、あなただからあなたを好きになったの。なのに女なら、なんて。鈍いにも程がある。だから私の思いにも気が付かないのよね。だったら交換してよ、私は男ならよかったのにってずっと思ってた。だってそうすれば、もっとあなたと触れ合える。あなたのいちばん近くに寄り添えるもの。


「大ちゃん」
「、……大ちゃん?」
「ばっ、…だからさつき、コイツの前でその呼び方すんなって、」
「あ、ごめーん」


牽制、のつもりだったのかは自分でもわからないけど。彼に効いたのは紛れもない事実。
だって。私が先に好きになったのに奪っていくんだもん。なんで? どうして? 私が先に、私の方が、私を見て、
私が、私の、私を、――私のもの!
そうよ、あなたは私のもの。誰にも渡さない。相手が誰であろうと。そう、

――相手が、どんなに大事な幼なじみだろうと。


火神君は私のものよ、大ちゃん。
今更改心したって遅いんだから。
絶対、絶対に渡さない。
その為なら手段はいとわないの。どんなに卑怯なことだってするわ。だって初めからフェアじゃないもの、女の私は一歩出遅れてるから。
火神君はきっと私と大ちゃんの仲を疑ってる。それも百も承知よ。だから女なら、なんて言ったのよね? 彼とそんな関係だと思われてるなんて虫酸が走るけど、あなたを手に入れる為ならそれすらも利用する。まずは、彼があなたに気がないって嘘を植え付けないと。


「ね、大ちゃん。おばちゃんが探してたよ、もう帰ろ?」
「あァ? バッカさつき、こっからがいいとこ――」
「ごめんね、火神君。大ちゃん貰ってくね?」
「っ、……おう、」


――ああ、だからそんな顔をしないで。
今に、私の愛で溺れさせてあげるから。



END
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