黒バス

□その他と
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星占いに心酔したり、風水に凝っていたり。
ロマンチストな奴だとは知っていたけど。


「だからって何のマネ…」
「今日はオレの誕生日、そして七夕だ。だから今夜に相応しいことをしているのだよ」
「…よくわかんねー」
「誕生日だから何でも言うことを聞くと言ったのはお前なのだよ」
「…いや、それはそーなんだけど。…これのどこが七夕に相応しいんだよ」
「バカめ。七夕の神話を知らないのか。今日は引き離された恋人同士の彦星と織姫が、一年に一度会うことを許されている日なのだよ」
「そんくらい知ってるっつーの!」
「では何がわからないと言うのだ」
「お前が布団にくるまってオレを抱きしめてるこの状況だよ」
「バカめ。だから今夜に相応しいと言っているのだよ」
「だからそれが意味わかんねーんだって! そもそも曇ってんじゃん。星、見えないし今年は会えてねーよ」
「バカめ。とことんバカな奴なのだよ」
「はぁ?! つかバカバカ言い過ぎだ!」
「この雲は地上にかかっているのであって、宇宙(そら)は雲などかかっていない。星はオレたちから見えないだけで、天ではちゃんと彼らは逢瀬を楽しんでいるのだよ」
「…あ、そう。……で? この暑苦しい布団にくるまってる意味は?」
「まったく。ここまで言ってもわからないとは、本当に真性のバカなのだよ」
「おいコラ」
「彼らはオレたちに逢瀬を邪魔されたくないから毎年雲をかけるのだ。オレもお前との時間を邪魔されたくないからな。だからこうやってお前を隠しているのだよ」
「………!」
「さあ火神。どんな夜を楽しもうか」
「…バカはお前だろ、バカ…」
「何?」
「オレたちはいつでも会えんじゃん。…あいつらとは違うだろ」
「………!」
「逆に見せつけてやろーぜ。オレたちはいつでも一緒にいれるんだぜって」
「……まったく。お前はどこまでも…バカなのだよ」
「っ、はぁ?!」
「覚悟はできているのだろうな?」
「……誕生日だからな」
「最高の誕生日になりそうなのだよ」


今までは星空なんてそんなに見上げなかったけど、こいつの影響で実は密かに楽しみにしてたんだ、天の川。だからちょっとザンネンだけど、周りに邪魔されたくないって気持ちはわかるからな。ガマンする。きっとあの雲の遥か上で、ふたりきりの再会を楽しんでいるに違いない。がんばれ、彦星。
…なんて、オレも随分ロマンチストになったもんだな、と、緑間の長い腕に抱かれながら思った。
でもそれも悪くない。

ロマンチストな恋人同士、ロマンチックな七夕の夜。



END
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