黒バス

□木吉と
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今日は火神が家に遊びに来ている。
祖父母は町内の慰安旅行で明日の夕方まで留守。なので部屋を抜け出し今はこたつのある居間で(うわ、伊月に聞かれたら過敏に反応されそうだな…)まったりとしていた。


「っは、こたつにみかん、やっぱセンパイちょーにあうな!」
「んー? そーかぁ?」


トイレに立っていた火神が戻って来ての第一声。火神を待つ間話す相手もいなくて口寂しかったオレは、こたつでぬくぬくしながら用意してあったみかんを食べていたのだ。「やっぱ」ってなんだと思ったり、似合うと言われて喜ぶべきなのか微妙だが、火神が楽しそうなのでまあいいか。


「今な、トイレのカレンダーに2月の誕生果? が“みかん”ってなってて、そこに“みかんのくだもの言葉”とかも書いてあったんだけど、すげーセンパイぽいなって思って見てたから」
「へぇ。どんな?」


オレの思いが伝わったのか火神は元居た場所、角を挟んだオレの左横の席に座りながら嬉しそうに話し出す。その言葉に「やっぱ」の意味を理解しつつ聞き返すと、「ちょっと待って」と携帯を取り出し何かを見た。釣られてオレも覗き込む。


「…えっと、団らん、憩い、健康、健全、信じ合う心」
「わざわざ写真撮ったの?」
「ん。絶対聞かれると思ったから。覚えてらんねーし」
「あはは!」
「笑うな!」


画面に写し出されているのは家のトイレのカレンダー、火神が言ってた“みかんのくだもの言葉”とやら。それがオレの行動を予測してのものだと思うとトイレで写真を撮る不思議な光景も愛しく感じる。
溢れた火神らしさに思わず笑えば火神は拗ねモード、だけど優しく髪を撫でてやると次第に顔も綻んだ。素直だねーかわいい。


「じゃーオレみかん王子な」
「なに、王子? …ぶっ」
「笑うなー。笑うとみかんやらんぞー」
「うそうそごめん、みかんちょーだい」


真面目に言うオレに火神が笑い、今度はオレが拗ねモード。籠に盛られたみかんを両手で抱え火神から遠ざける。だけど服を引っ張ってくる火神がかわいすぎるのであっさり折れてみかんを渡す。
そしてふと、さっきの“みかんのくだもの言葉”を思い出した。聞いた時から何か違和感あると思ったら、なるほど、そーゆーことか。


「でもそれさ、いっこ余計なの入ってたな」
「余計?」
「ん。…健全」
「ぶっ。確かにな」
「何をー」
「うわ! ちょ、センパイやめれ! くすぐってえ!」


自分で言ったが認められるとなんか悔しい。こたつの中に手を入れて火神の脇腹を突っつく。
段々楽しくなってきたが火神が涙目で「ギブ、ギブ」と懇願してきたので止めてやる。壊れちゃったらイヤだからな。


「でもこたつ懐かしいなー。あっちにいた頃にはなかったし、今住んでるとこにもねーし」
「こたつはいいぞー」
「ん。ぬくいな」
「ぬくいだろ」
「うん。ぬくい」


笑い疲れたのか火神はコテンと額をこたつテーブルに付け目を瞑る。そんな無防備な姿もかわいいが寝てしまっては寂しいと、こたつの中に入れられている火神の手を探り当て手を繋いだ。


「……はは、隠れて手繋ぐとか…なんかいいな、こそばゆい」
「ん」


それに反応良く、火神は下に向いていた顔をぐるりとオレの方に向けてくれた。テーブルからは離さずに今は頬がくっついている状態。
その行為がもうかわいくてかわいくてかわいすぎて、オレの心臓がどっきゅんと跳び跳ねるだけでは収まらず、考えるよりも先に優秀なオレの左手は火神の体を撫でくり回していた。


「……どこ触ってんだ、ですかセンパイ」
「んー? ふとももー」
「触り方やらしいっスよ」
「やらしく触ってんの。今うちももー」
「…センパイみかん王子なんだろ。健全は?」
「いやいやだからそれ余計なんだって、…いや、寧ろこれこそ健全でしょ、男の子として」


そんな会話をしながらもオレの手は止まらない。火神の希望通りに触れる箇所を実況すれば、火神だってその気になってきてることが一発でわかる、顔がほんのり赤い。
それはこたつのあったかさのせいじゃない、火神のエロさだって、オレは知ってる。


「知ってる? 火神。こたつはな、中でこんなこともできちゃうんだぞ」
「何が王子だ。センパイなんかエロオヤジで十分だ」
「オヤジ言うな」


悪態を吐くのも忘れずに、それでも火神はオレにされるがまま。そろそろいい頃合いになってきたのも知っている。
だけどな、火神。その減らず口も最高にかわいいけど、センパイはセンパイの手で蕩けちゃう火神が見たいわけ。せっかく家に誰もいないんだし。だから今はそのお口、ちょーっと静かにしてような。


「っ! ……むぅ、」


キスで黙らせると火神はムッとしたような顔を見せたけどそれも一瞬、ぽんぽんと背中を撫でれば一気に気を許しオレの愛を受け止めてくれる。そうだよな、だって火神だってその先を期待しちゃってるんだもんな。


(じゃーいっちょ本気出しますか)


愛しい愛しい恋人のリクエストに応えるべく、オレはそっと、火神を押し倒した。



END
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