黒バス

□黄瀬と
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オレは部活。
黄瀬は部活に加えてモデルの仕事。

そんなわけで、お互い中々会えない日々が続いていた。
学区が違うのはそれほど問題ではなかったが。


それが今日、約1ヶ月ぶりくらいにやっと会えることになって。
嬉しくて、柄にもなくそわそわしたりなんかもして。
2人で並んでショッピングなんかを楽しんでた。


そう、今日は俗に言うデートってやつ、

…の、はずなんだ。


はずなのに。



「黄瀬く〜ん写真撮って〜!」
「涼太〜こっちも〜!」
「今日撮影ないの〜?」
「部活は〜?」
「や〜んかっこい〜!」



黄瀬の周りには女子、女子、女子。
さっきまで隣にいたはずの黄瀬は、今やもうオレからは見えない。…まあ厳密に言えば頭いっこ飛び出してはいるけど、当の黄瀬は律儀にそいつらに愛想振り撒いたりしてやがるからちっともオレの方を見ていない。


あー…、
なんだコレ。
なんか……



「、っわ! 火神っち?!」


気づいたら、女共に囲まれていた黄瀬の腕を掴み、その場から逃げるようにして走り出していた。











「…どーしたんスか火神っち突然走り出して」
「…なんか、」
「ん?」
「………」


大分走ってからようやく立ち止まったオレに黄瀬は乱れた髪を直しながら訊ねてくる。
その問いに答えるべく口を開き掛けて、―思いとどまる。
正直に言うのはなんか癪だ。
だけどコイツのことで頭を悩ませるのはもっと癪だ。
もうこの際言ってしまおうか。隠す必要もない、だって久しぶりに会えたんだ、素直に楽しんだ方がいいに決まってる。

よし。

しばし頭の中で考えたあと顔を覗き込んで来た黄瀬に向き直り、すぅ、と息を吐き出してから答えた。


「なんかムラムラして」
「ムラッ?! …え、もやもやじゃなくて?!」
「……どっちもだ」
「……ッ」


言葉のチョイスを間違えたのかもしれない。
目の前の黄瀬の眼は、驚きと、そして、
ギラギラとした、雄の光を宿していた。

いや、でもあながち間違いでは、ない。
そんなこと言ってやんねーけど、言わなくてもきっと黄瀬は気づいた、オレの思いに。


「…誘われてると取りますけどいいですか」
「……どっちでも」


うん、やっぱり素直になった方がいいに決まってる。

オレの答えを受けた黄瀬は電光石火の如くオレを抱き締め、そして、小さなキスをそっと落とした。
柔らかく、優しい黄瀬のくちびる。だけどなんかもう、


「…全然足りねーんだけど」
「…あぁもう本っ当…勘弁してほしいっス、外なのに抑えらんなくなるって」
「抑えなきゃいーじゃん」
「……アホ、火神っち…」


そう言ったくせに、そのすぐ後に黄瀬は激しいキスをいっぱい降らせた。

それに応えるように、オレは強く、黄瀬の背中に腕を回した。


「…今日のデートプランいろいろ考えてたんスけど…全部すっ飛ばしてラストシーン行っちゃってもいいっスか…?」
「いいも何もオレもそのつもりなんだけど」
「火神っち……!」
「なんつー顔してんだよオマエ」


直前まで至近距離から熱い息を吹き掛けてきたくせに今の黄瀬はなんともマヌケな表情で。だって火神っちが煽るから…! なんて言っている。
そのギャップがおもしろいっつーか愛しいっつーか…、
まあ要するに、オレは相当黄瀬のことが好きみたいだ。黄瀬が思ってるより、ずっと。

それも言ってやるつもりはねーけど、大丈夫、絶対伝わってるから。
その証拠に黄瀬は飛びきりの笑顔を向け、オレも大好きっス! って…。

あの女子共じゃねーけど思わず悲鳴を上げそうになった、
のは、やっぱり言ってなんかやらねえ。



END
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