黒バス

□青峰と
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初めて二人が結ばれた翌朝、微睡みの中で甘い余韻に浸りベッドでいちゃいちゃしようと思っていた青峰。しかし目覚めると火神は既に隣にいず、何事もなかったかのように平然と朝食を作っていた。
いい匂い、なのだが少し違う。そんな熟練夫婦のようなさっぱりとした関係ではなく、とことん甘い新婚夫婦のような雰囲気に身を投じたいのだ。


「お前さぁ、もうちょっと余韻ってやつ味わおうって気ねぇの?」


ふっくらとしたオムレツを仕上げる火神の背後から近づき不満を述べる青峰。突然声が掛かったことに驚きはしたようだが、特に振り向いたり手を止めたりはせずに調理を続けながら火神は淡々と答える。


「はぁ? オレたちにそんな甘い関係似合わねーだろ」
「一応、二人で迎える初めての朝なんだけど」
「うっせ。お前だってそんなキャラじゃねーだろ」
「…それもそうだな」


火神に言われ思案し大人しく引き下がろうとした青峰。だったが、やはりどこか物足りなさを感じ、せめて少しはこっちを見てほしいと火神の肩に手を掛けた。


「おい火神、」
「あーっもう! もうすぐご飯できるから座って待っとけよ、……ってお前…!」
「ん?」


ようやく振り向いた火神に満足げな青峰。しかし火神の方は、その視界に映った青峰を見て絶句した。
青峰の、一糸纏わぬ生まれたままの姿を見て。


「…おまっ、パンツぐらい穿けよ!」
「何今さら照れてんだよ。昨日もう全部見たろ、お互いに」
「ちょっ、ま、そ……っ!」
「ほーぉ」


明らかに狼狽えている火神が面白く、青峰はからかってやろうともっと体を近づける、


「……昨日、の…っその、思い出すし。……やめろ…」
「……」


否、近づけようとした、のだが。


「…恥ずかしくって、お前の顔もまともに見らんねーんだよ…」
「……おぅ」


盛大に、隠しもせずに火神が照れ倒すものだから、伝染し青峰も顔を赤く染めることとなった。
何も甘い余韻に浸りたいのは青峰だけではなかった。本当は火神もいちゃいちゃしたかったが、青峰にも言ったように自分もキャラではないし照れ臭いだけ。だからなるべく青峰を見ないようにして平常心を保とうとしていたのだが、昨日の夜を思い出すのには最適な青峰の姿を目にしてしまっては、火神の中の熱が燃え上がらないわけがなかった。
上がってしまったものは仕方ない。火神は堪えきれず、でもやっぱり恥ずかしいから少しだけと、青峰の頬っぺたにキスを捧げた。突然舞い降りた待ち望んでいた甘い幸せに、しかしあまりに突然すぎて甘すぎて、青峰はかっこよく対処もできずに二人の周りはぎこちない変な空気に包まれた。
所詮は二人とも、初で純情で、お互いのことが大好きなのだ。


「…あっちーな、今日」
「おー…あっちーな」


本日の気温、平年より低い18℃。
二人の熱度、今世紀最大値大幅記録更新中。



END
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