黒バス

□その他と
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「火神、そこ座れ」
「……? 何でだよ、…ですか」


部活が終わり、部員たちも帰宅して残ったのは火神と日向。何の前触れもなく発せられた日向のセリフに反発しながらも、火神は言われた通り指示されたベンチに座った。
ちらりと見上げた日向の顔は、ニヤリと黒い笑み。
しまった、と脳が判断した時にはもう遅く、火神は日向に唇を奪われていた。


「何でだよ、だって? ンなの、キスするために決まってんじゃねーか」
「……ッ、」


唇を離され目の前いっぱいに広がる日向の顔。
その表情が色っぽくて、挑戦的で、不覚にも火神は言葉を詰まらせ顔を赤く染めてしまった。


「お、いーねーその顔。そそる」
「ば……ッ!」
「はいはい、その手は下げてねー。もう大人しくしてろよ、火神」
「……ッッッ」


言われるまでもなく、火神は大人しくならざるをえなかった。
流されてされるがままだった火神は気付けなかったが、キスの最中に既に日向の手は練習着の中に差し込まれており、更には日向の両の足の間に、体はがっちりと挟み込まれてしまっていたのだ。
これでは動きたくても動けない。
いくら火神の方が体格がいいと言っても、日向だって男だ。ましてや、


「お、素直じゃん。いい子」
「ッ、」


ましてや、火神は日向に惚れているのだ。
男らしく色気の含まれた眼差しと声色で迫られては、初めから抵抗などする気もない火神の体が拒否を示した動きなどするはずもなかった。


「、あー火神のニオイがする…」
「…るせ、嗅いでんじゃねーンなとこ…」
「オラ、顔隠してんじゃねーよ。そのヤラシイ顔見せろ」
「……っ」
「今オマエを攻めてるのはオレだからな、ちゃんと見とけよ」
「……見、てる……です、」


火神の返事を受けて、日向の笑みは更に黒さを増した。





***





「…センパイ、すっげ人変わるよな、…すよね」
「んー?」


普段は割と温厚な日向だが、火神との行為時にはバスケの試合中度々見せるあのクラッチタイムのごとく、所謂言葉責めをしてくるのだ。
今回も例に漏れず、日向は嫌がり顔を背ける火神を執拗に責め立てていた。
とっくに日向の手の中に堕ちている火神は、ひとたまりもない。


「いや?」
「……ッ! …じゃ、ない……だ、です…」
「オマエ敬語ひどくなってんぞ」


からからと笑う日向の笑顔に、また火神の心臓は跳ね上がった。


(ああ…くそ、これが惚れた弱味ってやつか…)


火神は日向から顔を背け、恥ずかしさや悔しさから気を逸らすため、きつく下唇を噛んだ。


「何? 惚れ直したって?」
「い…っ、てねーよッ!!!!」
「だから敬語」


それも全て見通されていることが嬉しくもあり、はたまた悔しくもあり、火神は日向に向けて側に置いてあったタオルを投げつけるのが精一杯だった。













「で、普段のオレとクラッチタイムのオレ、どっちが好き?」
「……、」
「おお、そーか。どっちもか」
「っ、だから言ってねぇッ!!!!」


やはり何枚も上手な日向に、火神には悔しさしか残らなかった。



END
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