黒バス

□その他と
4ページ/20ページ


「オマエ確かしし座だったな」
「……は?」


突然現れて突然過ぎる質問をぶつけてきた目の前の人物を、火神は持ち前の目付きの鋭さで睨み付けた。
このエラソウな喋り方が気に入らない、オマエってなんだオマエって。
そう思ったが、火神もその人物──緑間をオマエ呼ばわりするので、そこは目を瞑った。


「…だったらなんだよ」
「喜べ、今日は最高の日なのだよ」
「……はぁ?」


意図するところがわからなかった質問に問い返せば、やはり意味のわからない言い回しで返される。
緑間の出現時からあまり気分の良くなかった火神だが、この噛み合わない会話に更に苛々を募らせていった。


「安心しろ、そのためにオレは人事を尽くすことを怠ってはいない。見ろ、今日のオマエのラッキーアイテムの木彫りの熊は、奮発して北海道産の本物だ」
「……」


いよいよ意味がわからない。
緑間が占い好きで、その占い通りに行動しその占いに多大な信頼を寄せていることは火神も知っている。
しかし何故、緑間は自分の星座ではなく火神の運勢を気にし、更には火神のラッキーアイテムを持っているのか。
元々考えることの苦手な火神には、変人ともとれる緑間の思考など到底わからなかった。


「…何なのだよ、その顔は。酷いぞ」
「オマエがさせてんだろ」


あまりにも勝手に話を展開させていく緑間に、火神は怒りを忘れ呆れた視線を送る。
もう何でもいいけど、アホやってんなら他所でやってくれ、そんな思いも込めて。


「…まさかオマエ、意味がわかっていないのか?」
「わかるわけねーだろ、突然現れてンな話されても。オレの運勢がオマエにどう関係するっつーんだよ」
「……」


火神の視線を受けた緑間はようやく一人相撲だったことに気付いたようで、今日、と言わず知り合ってから初めて火神の疑問に耳を傾けた。
珍しいこともあるもんだと思いながら、火神は緑間の返答を待つ。


「…わからないとは、やはりオマエは馬鹿なのだよ」
「、はぁッ?!! てめ、バカに」
「まあいい。ならば教えてやろう」
「……」


第一声こそ火神の怒りを増幅させるような言い方だったが、それでも理由を教えてくれるというのならば抑えるべきだろう、そう火神は理解して、震える拳を握り締め緑間の傲慢な態度に従った。


「オマエは今日、恋愛運が最高なのだよ」
「………………あ?」


のも束の間、緑間の思いもよらないセリフにまたしても突っ掛かってしまった。


「いやだから意味わかんねーし! オレは、なんでオマエがいちいちオレの運勢気にしてんだって聞いてんだよ!」


話の通じていない状況に耐えきれなくなった火神が叫ぶようにして言えば、緑間はひとつ溜め息を零し、そして続ける。


「やれやれ、人の話は最後まで聞くものなのだよ」
「……ッ!」


その正論と鋭い眼差しに二の句が告げなくなり、悔しいが火神は押し黙るしかなかった。
そんな大人しくなった火神に気を良くしたのか、緑間はフン、と鼻で笑ってから、改めて火神の疑問に答えるべく口を開いた。


「オマエは今日、素敵な人と出会うことになっているのだよ。木彫りの熊もあるから完璧だ。そして、その相手というのがオレなのだよ」
「…………」


一気に告げられたその言葉に、火神は別の意味で押し黙るしかなかった。

いくら頭の弱い火神でもわかる。緑間の言っている意味、それは。


「どうだ」
「…と、言われても…」


自信たっぷりな緑間とは裏腹、やはり突然過ぎる展開に火神は自分でもどうしたらいいかわからずそう答えるしかなかった。しかしこれが素直な反応なのだろう。
だってムードも予兆も何にもなくいきなり告白されたのだ、しかも同性に。
火神が戸惑うのも無理はなかった。


「オレは人事を尽くす男だからな、抜かりはない。そしておは朝占いは絶対だ」
「……」


しかしここまで言い切られては、もう何も言い返せない。


「…ま、いーんじゃね?」


頬をほんのり朱に染めた火神の返事に、当然なのだよと緑間は笑った。



END
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ