黒バス

□その他と
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馬鹿な後輩を持つと部活動に支障をきたすので大変だが、それが恋人なら無下に放っておくわけにもいかず、日々 日向は声を嗄らしていた。




「なんっでレタスがRだよ! BLTって言うだろーがッ!」
「え?」


返却されたばかりの英語の小テストを見、日向はやはり今日も大声を上げる。
出来の悪い後輩の筆頭であり恋人でもある この火神大我は、帰国子女とは名ばかりで英語の出来は群を抜いて酷いものだった。

テスト前にあれほど教えたにも関わらず。今だって火神の好きなものを例に挙げ説明したにも関わらず。当の火神は相変わらず きょとん とし、全く日向の頑張りなど響いていないようだった。
これでは日向がキレるのも無理はない。しかしここまで来て投げ出すのも性に合わず、既に叫び続けて痛む喉を叱咤しもう一度叫ぶ。


「ハンバーガーだよ! お前だって食うだろ、ベーコン・レタス・トマトの入ったBLTサンド!!」
「…………ああ! あれそーゆーことか!」
「いや遅ぇよ!」


ようやく伝わった時には最早日向は怒る気も失せ、そんな日向を尻目に「なるほどな〜」と感心している火神に向け盛大な溜め息を吐くしかなかった。


「ったく…お前こんなのもわかんねェのかよ。帰国子女が聞いて呆れるわ」
「…うっせぇな。帰国子女はなりたくてなったわけじゃねーし大体、……」
「……なんだよ。言えよ」
「いや、いい」
「はぁ?! 気になんだろが! 言え!!」
「怒るからやだ」
「そーか怒られるようなことなのか」


火神が何かを言い掛けてやめる時は大抵自分でも認めてるように日向を怒らせる内容の時だ。しかし途中でやめても結局日向は怒るので、言い掛けてしまった時点で火神が怒られるのは避けられない。


「じゃあ言うけどな。キャプテンだって大して頭良くないくせにエラソーでなんか一々気に障る」
「なァッ?! オマエよりは大分いいわ!!」
「じゃあ教え方が下手なんだよ、わかんないのはオレのせいじゃない」
「よーし、そーか。そこなおれ火神」


正直すぎる火神の告白に日向のこめかみにはいくつかの青筋がピクピクと蠢いていた。
好意で教えてやってるというのに。この言い種はあんまりではないか。


「お前そんなにお仕置きされたいんだな」
「されたくねーし。つかお仕置きとか言いたいだけだろキャプテン。あと声 変」
「誰のせいだ! ……はぁーん。どうやら本気でお仕置きする必要があるみたいだなぁ」
「……は?」


豹変とはまさにこの事か。クラッチタイムのように日向がいきなりキレることは今までもあったが、こんな風に穏やかにキレるのは初めてだった。
静かな分、いつもより二割増しぐらいで恐い。


「…ちょ、やめろよキャプテン意味わかんね、」
「やめない。お仕置きだからな」
「……ッ!!」


危険を察した火神が日向を宥めようとするが全く取り合ってもらえずに手首を掴まれた。
そろり、見上げた日向の眼鏡の奥の瞳がキラリと鈍く光った。


「ご、ごめんなさいキャプテンもう言わないちゃんと勉強もするだから許して」
「お前のその言葉はもう信じらんねえ。あと敬語、なってないからダメ」
「ごめんなさい、でございます? 許してくれです? …え、謝るのに敬語とかあんのか?」
「重症だな」


ダメすぎる火神は放っておいて。
日向はお仕置きを実行すべく、火神の肌をまさぐりだした。いやらしく。愛する者同士が愛を育む行為を連想させる手付きで。
それを感じ取った火神が身動ぐが片方の手首を掴まれているためうまく回避できない。

逃げる火神。
日向は攻めの手を緩めない。

日向のお仕置き、それは火神を高めること。限界まで高めて高めて、だけど徹底して局部には触れない。キスもしない。決定的な快楽は与えない。
それは、完全なる焦らしの愛撫だった。


「っ、性格悪ぃぞ…っ」
「火神が勉強頑張んねーと止めない」
「……ッ!」


その温い愛撫に火神は耐えられなくなってきた。次第に身体が熱を帯び息も上がってくる。
身体がおかしくなる。
意地悪ばかりを言うその唇に触れたい。キスがしたい。
だけど言えない、そんなこと絶対に。

剥離していく心と身体に、火神は頭までおかしくなりそうだった。


「どーした火神、そんなにキスしてえの?」
「ん、なわけ…っ」
「まあ、してやんないけど」


その全て、日向にはお見通しだった。しかしそれでも温い愛撫をやめない。ましてやキスもしない。
火神が欲するその唇で、意地悪を紡ぐだけ。


「……ッ、こ、の変態ドS…っ!!」
「じゃあオレといるお前は必然的にドMってことになるなァ?」
「なっ! …んでだよっ、ならねーよッ!」


ついに限界がきたのか素直に欲望を打ち明けられない火神の口からは罵声ばかりが飛び出す。それが面白くて日向も罵声で返すが、何せ火神から溢れ出る色気が半端ない。昂る熱を逃がそうと はくはく と半開きの口から漏れる吐息は熱く、それを受け日向自身も熱が上がるのを感じた。
これは勉強なんて自分がムリだ、そう悟った。


「…ほら、どうしたい火神。どうしてほしい?」
「ッ、……」
「ん?」
「………キス、したい…」


ようやく素直になった火神に告げられた欲望。
それに満足した日向は、堕ちてきた火神と共に堕ちるとこまで堕ちることを決めた。


「…おう、してやるよ」


火神が補習になったら一緒につき合ってやろう、そう決意し、日向は自分も十分に高まった熱を共用し合うように火神に口付けた。



END
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