黒バス

□物置
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「今夜は星見えないっスね、ざんねん」

窓の外を見上げて黄瀬はため息と共にそう呟いた。
ひどく残念そうなその姿、原因は大雨が降り頻るこの天気にあった。

今日は七夕、年に一度空の恋人たち、彦星と織姫が逢うことを許された恋人の日だ。
しかしその象徴とも言える天の川が、この天気ではとても見れそうにない。
黄瀬は火神と見てロマンチックな夜を過ごそうと心に決めていたため、これほどまでに落ち込んでいるのだった。

しかし。

黄瀬にとっての織姫である大切な火神の言葉で、黄瀬は見違えるほどに晴れ晴れとした表情を取り戻す。


「見えんじゃん、星」
「えームリっスよこの雨じゃあ」
「いや、」

そう言ったかと思うと火神は、ぐい、と黄瀬の首を掴み自分の方へと引き寄せて、

「ほらな、星、見える」
「…………え、」

オマエの髪、きらきらしてて星みてぇ。

そう呟いて、黄瀬の髪に鼻先を埋め、笑った。

「…火神っち、」

きらきら、きらきら、
どんな星の輝きにも負けない火神の笑顔を目の前に、黄瀬はもう、外の天気などどうでもよくなっていた。

「…誘うのうまくなったっスよね、火神っち」
「んー?」
「…オレだけにしてね」
「とーぜん」



きらきら、夜空の星は見えないけど、
ほら、目の前に、


とびきり輝く、自分だけの一番星。



END
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