復活

□フランと
10ページ/22ページ


センパイの部屋の前。
今日はどうやって寝込みを襲ってあげようかと考えていたら、中からセンパイだけじゃない、ガラの悪い汚い声も聞こえてきた。



『ベルはSだなぁ』
『しし、王子Mだし。Sとかないから』
『そぉかぁ?』



―この声はスクアーロ隊長? はぁ? 何でカス鮫隊長がベルセンパイの部屋にいるんですかー? てゆーかSとかMって……ちょ、センパイとナニやってる最中ですかー!!!



もうどう襲おうかとか悠長に考えてる場合じゃなかった。緊急事態発生ですー! 隊長を始末しなくては!!




「ちょっとセンパーイ!! アホの隊長とナニしてるんですかー!! てゆーか何Mとか公言しちゃってんですかー!! センパイのMはミーだけが知ってればいいことなんですー!!」




「………は?」




勢いよく扉を開けて殴り込めば、そこにいたのはベッドの上で裸でまぐわうセンパイとデカ声隊長……ではなくて、服をぺろんと持ち上げて、腰をメジャーでグルグル巻きにされたベルセンパイ……、ん? メジャー?



「何言ってんの、カエル」


きょとんとした顔で突如現れたミーを見ながら口を開くセンパイ(そのアホ面もかわいいですー)。


「新しい隊服の採寸をしているんだぁ」


次いで、同じく間の抜けた顔でミーを見ながらロン毛隊長(相変わらずアホ面ですー)。


そんな言い訳でミーは誤魔化せませんよー! そう言いたかったけど、隊長の言うことが正しい証拠にセンパイの細い腰には未だメジャーが巻かれているし何より2人共服着てますし(お腹見せてるのも本当は気に食わないんですけどー)。
センパイの貞操が危ないと勢いで飛び込んでみたはよかったが、どうやらそれはミーの杞憂だったようですー。MとかSとか言ってるからてっきりプレイの嗜好のことだと思いましたけど、なーんだ、服のサイズのことだったんですねー人騒がせな。良かったですねー隊長、死なずに済みましたよー。


「ししっ、バッカじゃねーのお前。早とちりしてんの、だっせー」
「………む」


しかし安心したのも束の間、ミーのうっかりさんをセンパイは見逃してくれなかった。心から楽しそうに笑いミーを馬鹿にしてくる。
だってしょうがないじゃないですかー。センパイを心配しての早とちりですよ、なんでわかってくれないんですかミーの愛を。

わからず屋のセンパイにちょっとカチンときましたー。
ので、苛めてやりますー。



「なーんだ、良かったですー。センパイのM体質がロン毛隊長にバレたわけじゃなかったんですねー」
「つーかお前王子の部屋に入る時ノックしろよな」


センパイは、センパイをお仕置きするためのミーのセリフの真意に気づかずに、見当違いなことだけ言ってあっさりと流した。思った通りですー。

ミーが気にしているのは、そう、センパイの反応ではなくて。

ちらりとセンパイの隣に立つ隊長を見る。
すると。



「…ベル、お前Mだったのかぁ…」



ぽそりと呟かれたその言葉に、ミーはひとりほくそ笑んだ。
ミーの思惑通り、隊長はしっかり真意に気づいてくれた。ナイス隊長。やればできるじゃないですかー。

では、ごほうびにもーっといろいろ吹き込んでやりますー。


「そーなんですよーベルセンパイってば普段こんなにツンツンしてるくせに夜はそりゃーもうM全開でー」
「…そ、そうなのかぁ…」


少し顔を赤くしながらミーのセリフに耳を傾ける隊長は実に滑稽だ。何だか楽しくなってきましたー。


「は、ちげーし! スクアーロも信じてんじゃねーよ!」


楽しくなってきたところで、ようやくセンパイがミーのセリフの真意に気づいたようです。が、もう遅いですー。隊長は「言わなくていい…」と呟きセンパイの肩をポンポン叩き部屋を出て行きました。確実に、ベルセンパイがMだということを信じて。



「…ちょ! おま、フラン! 何嘘言ってんだよ! あのバカ信じただろっ!」
「知りませーん。ミーは真実を述べたまでですー」
「何が真実だっ!」


2人っきりになった途端飛んでくるセンパイのナイフをひらりとかわしながらセンパイの近くに歩み寄る。

知ってますからー。こんなSっぽい行動をとっておきながら、本当はMだってこと。だから恐くなんてありませーん。



「ミーを差し置いて、2人でいた罰ですよー」



耳元で囁けば、やっぱりMなセンパイは、ミーのお仕置きを期待して静かにナイフをしまった。












「…あれ? てゆーか採寸ていつもはルッス姐さんの役割じゃあ…」
「ん? オレ毎年スク先輩だけど?」
「え、」




隊長、やっぱり殺しますー。



fine.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ