復活

□その他と
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「…ベル、何してんだぁ」
「べっつにー。王子ヒマだしひとりで遊んでるだけ」


昨日の任務は久し振りに骨のある相手だった。
夜中の内には帰って来れるはずだったが、思ったより粘られて仕留めるのに時間が掛かってしまった。
そのため、本来ならば帰城後すぐに報告書を出さなければならないのだが、さすがに疲れてそのまま眠ってしまったのだ。

そして今、朝起きて書き始めた報告書ももう終わりに近付こうというところ。突然開いた自室の扉に目を向ければそこには可愛い後輩であり恋人でもあるベルフェゴールが立っていて。「どうしたぁ」とスクアーロが声を掛けるもベルは無言のまま近寄るだけで、ついにはスクアーロの膝の上にちょこんと収まった。
その行動の意図がわからずにスクアーロは声を掛け続けるが、依然としてベルは黙ったままスクアーロの髪を弄ったり隊服のボタンを外しては付けを繰り返したりしていた。

意図はわからずとも可愛らしいその行為が嬉しくて、別にこのままでもいいかとスクアーロは思ったが、如何せん画面が見えない。早く報告書を仕上げて五月蝿いボスに提出しなければ、また理不尽な暴力を奮われるのは目に見えているのだ。


「…ベル、何してんだぁ」
「べっつにー。王子ヒマだしひとりで遊んでるだけ」
「…見えないんだがぁ」
「オレよく見えるし。スクアーロの顔」
「……」


少し思いを巡らせたあと、仕方ない、とスクアーロは手を止め再びベルに声を掛けるが、ようやく口を開いたベルから返ってきた言葉はそんな可愛らしいもので。
思わず言葉に詰まり、今度はスクアーロが黙る番だった。


「…誘ってんのかぁ?」
「さぁ?」


このままでは年上の威厳に関わると無理矢理放った言葉も軽くかわされて。
妖しく微笑う、この目の前の小悪魔な王子には敵わないと、スクアーロは小さく溜め息を零した。


「ダメじゃんスクアーロ」
「…何がだぁ」
「溜め息吐くとシワ増えるよ」


すると、そう先程の淫靡な雰囲気を纏っていた様子とは違い無邪気な少年のように言いながら、ベルはスクアーロの頬をつんつんと指で突っついた。
これには呆気にとられ、やっぱりまだまだ子供だなと思いながら、スクアーロはそのベルの細い指を握り引き寄せた。


「それを言うなら幸せ逃げる、だろうがぁ」
「ちがうよ。だって王子逃げないもん」
「……?」


間違いを訂正してやったのだが、ベルは自信満々にそう言い切った。

そして、その噛み合っていない言葉に不思議そうな顔をしたスクアーロに、満面の笑みを向け、告げた。




「オレはずーっとスクアーロのそばにいてやるし。しし、スクアーロの幸せって王子でしょ?」




だから幸せは逃げないよ、

そんな愛らしいことを言われては、スクアーロはもう、ベルを力いっぱい抱き締めるしかなかった。



「痛いしスクアーロ」
「うるせぇ。ベルが誘ったんだろうがぁ。文句は言わせねぇぞぉ」
「うん。その変わり王子と遊んでね」
「たっぷり遊んでやるぜぇ」


腕の中で嬉しそうに笑うベルを見て、スクアーロも笑顔を抑えることができなかった。

そして、やっぱりこの可愛い可愛い恋人には、到底敵わないな、と思った。



(…でも、まぁ、それも悪くないなぁ)









しかし。

報告書を提出するのをすっかり忘れ、XANXUSにウイスキーのボトルを投げつけられたのは、言うまでもない。



fine.
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