復活
□その他と
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忘れるわけがない
忘れられるわけがない
一緒に過ごした、あの幼い日々を
止めてしまった、あの遠い日の記憶を──
「───っ、」
黒く染まった世界から抜け出すため、ベッドから飛び起きた。
じわり、身体中に汗をかいている。
貼り付く衣服が気持ち悪い。
喉が異様に渇いていることに気付き、ベッドサイドに置いてある水を流し込む。
いつも適温に保たれている室内のせいで温くなったそれは、正直不味かった。
また、あの夢だ。
幼い頃、血を分け合った兄弟を、
ジルを、殺した日の、夢。
あまりにリアルで、あまりに鮮やかで。
毎日毎日、もういい加減変になりそうだ。
別にコワイとか、そんなんじゃない。
ただ、気味が悪いだけ。
ジルを殺して、目の前いっぱいが血で赤黒く染まって、そのままオレは記憶を飛ばして。
そして最後は必ず、ジルが笑いながらこう言うんだ、
「会いに来たぜぇ、ベル」
「───、え…?」
いつも夢で聞いているそのセリフ。
いやに鮮明で、耳元で聞こえたようで。
「会いたかったぜ…ベル」
「───」
夢か幻か。
顔を上げると、ベッド脇には輝く金の髪を靡かせた、
ジルが、立っていた。
「しししっ、お前にオレ様が殺せるはずねーんだよ」
「……」
ジルは不敵に笑いながら、オレの頬に手を伸ばし、触れた。
触れたところに伝わる、ジルの体温。
少し冷たかったけれど、それは紛れもなく、生きた人間の体温だった。
これは現実。
ジルは生きていた。
殺せていなかった、あの日に。
「ベル…また一緒に遊ぼうぜぇ」
「………」
ジルは生きている。
「オレもあの時とは違う。もう不覚は取らねえよ」
ならば、もう一度───、
殺す、まで。
幼いあの頃に、赤い血を浴びる快感を知ってしまったオレには、
それしか、選択肢がなかった。
あと数分後、血の塊の中で横たわっているのは、
ジルか、
それとも───
fine.