黒バス

□リクエスト
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■限定だから




ゆらり、ゆらり
目の前で動く木吉の指。
最初は目で追うだけの火神だったがついに我慢の限界、

ぱく、


「…またか火神…」
「だってセンパイの指うまそうなんだもん」


そう言って困った顔を覗かせる木吉を無視し、はむはむ と上下の唇で挟み込んだ。
それは次第に威力を増し、ついには歯を立てて口腔内に取り込んだ木吉の大きな手に相応しい長い指を味わう。


「…うまい?」
「ん。んまい」
「そっか、」


離す気配のない火神を見つめ木吉は思考を巡らせる。
噛みぐせのある火神に気づいたのはいつだったか。まだ付き合い始める前、汗をかいた顔を洗いタオルで拭こうとした途端、突然頬っぺたに噛みつかれてひどく驚いたのを覚えている。あの時既に火神に後輩としてではない好意を寄せていた木吉は、その行動の真意を知りたくて躍起になったものだ。まさかどうでもいい、ましてや嫌いな人間にそんなことはしないだろうというのが木吉の考えで、あわよくばその流れでお付き合い、なんてことまで考えていた。まあ結果はただの噛みぐせだったわけで、暫く落ち込んだことも同時に思い出した。

尚も火神は噛むのを止めない。
全く痛みがないわけではない。歯を立てられているのだからもちろん痛みはあるし、それこそ歯形がつくほどに噛みつかれることもしばしばだ。
しかし、無防備に、ただひたすら行為に没頭する火神は普段より幼く見えて正直…かわいい。だから咎めることもできず木吉は火神にされるがまま。『愛しい』という感情の前では痛みさえも快感へと変換されるのだ。


「…他の人噛むのはやめてね」
「んー」


オレってマゾなのかな、
そんな疑問が浮かんだが未だに噛むことを止めない火神に笑みが零れ、愛しさから そっと頭を撫でその疑問は打ち消した。

気持ち良さそうに目を細めるその表情に。時折触れるその熱い舌に。
火神がくれる全てに木吉の中の欲望が滾り出す。


「…もう。うまそうなのは火神でしょ」


ぐい、と無理やり噛まれていた指を引き抜き、行為を中断され不満そうな顔を見せた火神に顔を寄せ、


「今度はセンパイにも食わせて」


一言告げ、ぱく、と熟れたフルーツのような火神の真っ赤なくちびるに噛みついた。
甘く感じるのは惚れた欲目なのだろうか。


「…んむ、オレうまい? センパイ」
「ん、めちゃくちゃうまいよ。火神…さいこう」


一頻り味わったあと、くちびるを離した途端に何ともかわいいことを言われ、木吉はまた欲望が生まれるのを感じた。そして散々好きにやられた分、お返しとばかりに再び火神の、今度は口腔内を貪った。
煽られまくりだがそれも悪くない。寧ろ嬉しい。


「やっぱりオレ マゾなのかも…」
「ふは、マゾなのセンパイ」
「ん。痛いの好きかも」
「じゃあお望み通り痛くしてやる、んむ」
「でも火神限定だから、いてて」
「あたりまえだろー」


絡ませようと伸ばした舌に噛みつかれ木吉は痛みに顔をしかめるが、それは苦しさからじゃない。火神のくれる行為のひとつひとつが嬉しくて、愛しくて、幸せなのだ。
人差し指にはうっすら残る火神の歯形。それすらいとおしい。

じん と広がる指先の痺れに悦びを感じ、今度は耳に噛みつこうとしている火神を抱きしめながら、やっぱりオレ マゾかもな。そう思う木吉だった。










「…おいそこのバカップル。何度も言ってるけどな、やるならあとでやれっつってんだろーがッ! 木吉! お前また指痺れてしばらく動かせないとか言うんじゃねーだろーなコノヤローッ! もう休憩終わりだぞ! 練習できんだろーなお前っ!!」
「しまった日向、指が痺れて動かせない!」
「それ今オレが言ったよ! それ見たことか!」
「ダメな奴だな〜センパイ」
「お前が言うなバカガミ!!」



END
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