Novel(短編など)

□深紅の閨〜背徳の軍服〜
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 すべてが寝静まった夜半。

 王宮の一室。 

 窓からは冷たい月の光がさし込む。

 か細い喘ぎ声だけが空気を震わせる。

「…っ…はぁ…っ。」

 帝国軍人、橘明(タチバナアキラ)は豪奢な寝台の上で四つん這いになって声をあげていた。
 
 真紅のビロードを乱して悶える身体は陶器の様に透きとおり、興奮のためかわずかばかり紅く上気している。

 士官学校時代に鍛えられた身体は決して大柄ではなかったが、均整のとれたしなやかな体つきをしていた。

 その身体が男の欲望に串刺しにされて若鮎のようにビクビク跳ねる。

「ああっ…」

「どうした? もう降参か?」

 そう言って背後から男に突き上げられる。後孔にくわえ込んだ男が己を主張する。                        
 この男、サイードは第三十二代ザナビア帝国の支配者にふさわしい力強さで明を責め立てた。

「んんっ…ああぁっ…」

 体を支える手足に力が入らない。

 明が皇帝の褥に呼び出されてから、かれこれ二時間が経とうとしていた。

 苦しいだけなら耐える自信はある。
 しかし、男のもたらす快感に身体は陥落寸前だった。

 快楽に引き摺り込まれる。

 いっそ、堕ちてしまおうか。

 処女でもあるまいし、いまさら何を守ろうというのか。

 抗って何になる?
 抗ってこの男に引き摺り堕とされるくらいなら、
自分から堕ちてやる。

 己の意思で。

 堕ちて、逆に楽しんでやればいい。無理やりに与えられる屈辱さえ、快楽に変えて。

「はっ…も…っもう……。」

「もう、何だ? 言ってみろ。」

 耳元で低く囁かれる。
 耳に熱い息がかかる。
 それだけで感じてしまう。

「もう…いっ…いき、たい。」

 明の前はとうに限界を超えている。

 しかし、達することはできない。

 明のそこには痛々しいほどぎちぎちに綾紐がくい込んでいる。

 日本人の血をひくお前にはこれがお似合いだ、とサイードの手で縛られてしまったのだ。

 先端からは透明な蜜をだらだらと垂らしている。

「はぁ…い…くっ…」

 あまりのつらさに明は自身に手をかけ、綾紐をはずそうとしたが、サイードに手首をとらえられベッドに縫い留められてしまった。
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