たんぺん
□しずけん(アリナ)
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「静ちゃん、ほら、こっちにおいで〜」
「わん!」
やぁみんな、こんにちは。
情報屋の折原臨也だよ。
今日は静ちゃんと池袋でお散歩さ。
静ちゃんったら、こんなに嬉しそうに尻尾振っちゃってさ、ほんとに、
「可愛いねぇ、静ちゃんは」
「わん!」
「……」
「わふ?」
「はぁ…」
……そうだよ、静ちゃんと言う名の犬だよ。それがどうしたのさ。
別に静ちゃんと毛の具合が似てるからとか、そういう理由じゃないから。
勘違いしないでくれるかな。
ただ犬飼いたいなーって思っただけだから。
はは、俺って金持ち。
「さぁ静ちゃん、次は標識投げてみようか!」
「わん!」
流石名前が静ちゃんなだけあって、態度もでかいんだねぇ。アハハハハ。
「……はぁ」
何でかな?
今日はやたら溜め息を吐いている気がする。
それもこれもお腹が空いているからかもしれない。後でウ○ーダーでも飲もう。
「いつまでその犬で我慢するつもりだ?」
「!し、静ちゃん!…あの、こいつは…」
突如現れるバーテン服。
いつの間に…、まさかずっと見てた?
――こ ろ さ れ る 。
俺が危険を察知し逃げようとした時、静ちゃん(人)は逆にフッと穏やかに笑った。
「馬鹿だろ、お前」
「え…?」
「そんな犬飼わなくてもよ…俺がいるじゃねぇか」
――な、何言ってるの…?
「ば、馬鹿は静ちゃんの方じゃないの?俺はただ、静ちゃんを犬に見立てて最大の侮蔑を…」
「ならさっきの溜め息はなんだよ」
一歩、俺に近付く。
「は…?俺の事ずっと見てたの?気持ち悪いんだけど」
「はぐらかすな。俺は理由を聞いてんだよ」
一歩一歩、確実に近付いてくる足。
「……」
「いい加減素直になりゃ良いじゃねぇか。因みに俺はてめぇの事が好きだぜ」
殆ど距離がなくなり、前に立つ何処か勝ち誇った顔を見て…俺の中で何かが弾けた。
「…だ、だって…静ちゃんが最近、会ってくれないのが悪いんだよ…」
「やっと素直になりやがった。…ほら」
まるで先生に怒られてる園児みたいに、語気が弱々しい俺の目の前に、静ちゃんはある物を見せる。
「これは…?」
金属で、突起している部分が所々欠けている。……これって…。
「俺ん家の鍵だ」
「し、静ちゃん…っ!!」
感極まって抱き着く俺の頭を静ちゃんは優しく撫でた。
「甘えん坊だな、臨也は」
「わおーん!!」
静ちゃん(犬)は、俺達を祝福するかのように高らかに吠えた。
「ままぁー、あの人何やってるのー?」
「そんな事より、今日はハンバーグよ」
「ほんとに?わーい!僕、ハンバーグ大好きー!」
「……トムさん、あれ何すか」
「ん?さぁな。演技の練習じゃね?」
「静ちゃんラブ!俺は静ちゃんを愛してる!!」
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シズイザです。
誰が何と言おうと、シズイザです。
静ちゃんって男前!!
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