たんぺん
□風邪薬(一十木)
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― 池袋・昼 ―
…おかしいなぁ
都会の喧騒に身を置きながら折原臨也は違和感を感じていた
朝から食欲もなく、思考もボンヤリする
きっと自身の体調は宜しくはないだろう
だがそれに自発的に気づけないからこそ、彼はこんな場所にいる
「まあ取引も終わったし…そこら辺でも見て回ろうかなぁ」
携帯をポケットに仕舞いつつ、池袋の駅周辺をウロウロする
駅には実に多種多様な人間が溢れかえっているからだ
大好きな『人間』を見ているのは飽きない
思考も
行動も
表情も
感情も
全てに相違がある大量の『人間』の波は、彼の目を楽しませるには充分過ぎる
しかし今日は違っていた
「…なんだか頭ボーッとしてきた」
直後、聞き慣れた怒声が自分の名前を叫んだ気がした
その瞬間駅に溢れていた人々は蜘蛛の子を散らす様に逃げていく
「臨也手前ェ…!!池袋に顔出すなって一体何回何回何回言わせるつもりだ!!!?あ゙あァ!!?」
見慣れたバーテン服に聞き慣れすぎた怒声
思考が回らなくなっている頭でさえ、判断できる
「…シズちゃん」