Tales Novels
□無垢な言霊
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「………ここは…?」
目覚めると、そこは見覚えのある景色。
ティアはその場所に独りで立っていた。
(どうなっているのかしら…?私は確かさっきまでみんなと……)
――宿屋にいた筈――…
そう、状況が理解できた。
(そうだわ―――此処は…たぶん、夢の中)
深い眠りに堕ちている
…だがまたここで疑問が浮かぶ
(……どうして夢だって理解できるの?)
普通なら、…普通の夢ならば、夢だと把握できることはほぼ無に近い筈。
冷静な性格が幸いしたのか災いしたのか、自分が置かれている状況に不審な感情を抱いた。
「――いやなかんじだわ」
思わず口にするも、誰も聞く者は居らず、ティアの台詞はその世界に音もなく消えていく。
この自分しかいない世界はどことなく、白い色彩で覆われている。霧に覆われている、といった方がいいだろうか。
景色は現実の、どこかの場所にひどく類似しているように思う。どこに似ているのだろうか?ともかくゆっくりと歩を進めながら、ティアは考える。
石畳の庭を歩き、堅固な印象の扉を開けると、広がった光景は綺麗な紅い絨毯が敷かれた大広間だった。
「ここは…貴族の屋敷か何か…?さっきの庭も随分広かったし…それに」
自分はこの場所を知っている。行ったこともある。
記憶を辿る―――。
そう、あれはこの旅の始まりの頃…
キムラスカとマルクトの戦争を回避しようと導師イオンやジェイド、アニス、ガイ、そして巻き込む形となったルークらと共に訪れた、
「…そうだわ…!ここは…………コーラル城!」
しかしなぜコーラル城なのだろうか?自分の夢に疑問を持ちながら更に歩を進める。
すると
「ねえ、おねえちゃん」
声がした
「……え?」
声が聞こえた方――遠くの正面方向を向くと
いつの間にか、そこには一人小さな男の子が立っていたのだ。