book2

□愛の病
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コンコンコン。

何者かが部屋の扉を叩く。ここに用がある人間なんて限られている。

だからこそ無視を決め込んだ泉はクーラーをガンガンに利かせ、ベッドに全身を沈めていた。

「へぇ、可愛い子だな」

「あ、兄貴!勝手に人の部屋に入って何してんだよ」
机の方から聞こえる低い声。ドアをノックする音がなくなったから、諦めたのだと油断していた。

慌ててベッドから起き上がった泉は、兄が手にしている写真を取り上げる。

「あ〜。もっと見たかったのに」

「うるせーな。そんなに見てーならコンビニとかで裸のグラビアが載ってるエロ本でも買ってこいよ。金、貸してやるから」

口を尖らせて文句を言う兄に、泉は毒を吐く。そしてそのまま、机の上に出しっぱなしにしていた教科書に勢いよく写真を挟んだ。

「何だよケチ。写真の1枚くらい見せてくれたっていいじゃん!大学に行ったお兄様が弟のために遠路はるばる帰って来たのにさ。冷てーよなー」

「はぁ?冷たいって言ってっけどな俺、頼んでねーし。つーか用が無いなら今すぐ出ていけ」

犬にしつけをするように、指でドアを指す。

「わ〜待った待った。俺の部屋の漫画ってアッチに持ってちゃっただろ?…だから、お願い!絶対に邪魔はしないんで、ここにある漫画読まして」

顔の前で両手を合わせて懇願する兄がアホすぎて、泉は毒気が抜かれてしまう。

「しゃーねーな。読んでもいいけど、ぜってぇ邪魔すんなよ。」

「へいへい。それじゃ、孝介の気が変わらないうちに読ましてもらおうかな」

そう言って兄はベッドに寝転び漫画を読み始める。それを見届けた泉も机に向かった。
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