book2
□ノックは夜中に
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暖房で暑くなった部屋の窓を開け、ベランダに出る。
冬の冷たい空気が火照った顔に当たって気持ちいい。
ベランダから見える夜空は、ダイヤモンドを散りばめたような星が輝いてキレイだ。
今日は12月でいちばん楽しい日のはずなのに、ベランダにいる三橋の表情は淋しそうだった。
「れ、練習が大変なのは知ってたけ、ど、今日だけは隣にいて、ほしかったな……」
二人が住んでいるのは群馬と埼玉。
付き合えば遠距離恋愛になるってことも、会いたいときに会えないということも分かっていたつもりだ。
だけど淋しくなってしまう自分がいた。
「ふたりっきりで過ご、す、初めてのクリスマスだったのに…」
気がつくと、ため息混じりに呟いてしまう。
「だ、ダメダメ。お、俺は勉強も部活も頑張っている、修ちゃんが好きなんだ、から……」
沈んでしまいそうな気持ちを振り払うように顔を振った三橋は、右手に持っている携帯を開く。
淡く光る待ち受け画面の中には、二人でいるときに撮った優しい笑顔。
それを数秒間ほど見つめ、携帯を閉じた。
「も、もうこんな時間だ。あ、明日も部活だか、ら、もう寝よう」
部屋に戻ろうとして振り返ったのとほぼ同時にドアを叩く音がした。
さっと窓を閉め、鍵もかけず慌ててドアを開けた。
するとそこには、思いがけない人物が立っていた。