book1
□手をつなぐ
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昨日の夜から降り続いている白い粉雪。だから今日の部活はお休みだ。
「お、沖くん、お待た、せ。」
ここに来るのに全速力で走ってきたのだろう。その証拠に三橋の息は上がっていた。自分のためにここまで必死な姿が愛おしい。
「大丈夫だよ。俺もさっき来たところだしね。」
本当は10分くらい前から待っていたが、人に迷惑をかけたと気にしちゃうカワイイ恋人に優しいウソを沖はつく。
付き合ってから、いつも一緒に下校をしている。自転車の日もあるし、徒歩の日もある。お互いにクラスが離れているからこそ、この短い時間は何よりも大切だ。話すことは、部活のことにクラスでの出来事がほとんどだけど。
「た、田島くんが泉く、んに怒られて、たよ。」
「田島が何かしたの?」
「う、ううん。何もしてな、い。でも、宿題忘れて、て…。おれは、沖くんのおかげ、で褒められた、よ。うひ。」
嬉しさ溢れる笑顔で答えた。独特の笑い声のトッピングをおまけに。
沖は前日に宿題を教えてやったのだ
「よかったな〜。三橋。」
沖は少し癖のある茶色い髪の毛を優しく撫でた。
(例え、宿題を忘れたとしても泉は怒らなかっただろうけどね…。)
心の中で、そっと呟いた。