book1
□前から いまから 明日から
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バンッという音を響かせて、その扉を開く。部屋の中からはトランペットの音がする。球場で聞こえるのと同じ音色だ。
「えっ、えーっと君は、野球部の三橋くんだよね。」
トランペットを脇にかかえ目の前の少年に話しかけた。
「は、はい…」
息を切らしている三橋には返事をするので精一杯だ。
そんな三橋に微笑みかける。
「そんなに慌てて大丈夫??はい、これ。」
松田は自分の飲みかけのペットボトルを渡す。
一方の三橋は、全速力でここまで来たので、ノドが死にそうなほど乾いている。顔から汗が流れ落ちそうなくらいに。
「あ、ありがとう、ございます。」
人の飲み物をもらうという行為に慣れてない三橋は正直とまどったが、大切なことを伝えたくてここまで来たことを思い出してゴクリと一口だけ口にした。
やっと落ち着いた三橋が松田に話し出す。緊張しているせいか体も声も震えてしまう。
「あ、あの…おれ、いつも、応援してもらってる、お礼を、言いたくて、ハマちゃんが、ここにいるって、教えてくれて…」
あまりにもビックリしてしまい松田はメガネ越しの目が大きく見開いてしまう。
「うおっ。」
「俺も三橋くんに力をもらっているんだよ。」
松田はそのまま手を背中にまわし、真綿で包みこむように三橋の体を抱きしめた。