SHORT

□招かれざる客〜その名はおじゃ〜
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最近、小太郎さんと一緒にいると妙に恥ずかしかったりドキドキしたり何だか些細な事で苛々したりする


何だかこのまま一緒に居ると‥‥



いけないような気がする‥


だから私なりに小太郎さんが帰れる方法を考えてみた


スタンダードに来た時と同じ条件にしてみよう!



確か‥会社の休み前日の‥

日付が変わる前くらいに‥

呑んでたら小太郎さん落っこってきたんだよね?


流石に山口県限定毛〇公は手に入らないから、なんかで代用しよう!


同じ山口県ならいいかな?






あれから準備を整えて、今日が決行の日!


小太郎さんにも付き合って貰って二人で久々に晩酌中だ



もうじき日付が変わる‥



本当に小太郎さんが帰っちゃったら‥



でも‥‥これで小太郎さんが帰れるんだったら‥



傷は浅いうちの方が‥‥



そんな自分勝手な事を巡らせながら手に持っているグラスを勢いよく煽る




どすんっ


「‥‥ゃ‥」


そんな時、バルコニーから鈍い音と微かに声が聞こえた


「‥‥‥っ!?」


『‥な、なにっ?!‥もしかしてっ?』


嫌な考えが頭をよぎる‥


その考えが合っているか確認する為に咄嗟にバルコニーに続く窓のカーテンに手をかけようとしたら


視界いっぱいに小太郎さんの背中が飛び込む


「‥‥‥‥」


『‥ど、どうしたのっ?』

私の前に立ち塞がる小太郎さんは何時もの雰囲気じゃなくて


私にも分かるくらい警戒してる為なのか殺気みたいな物を醸し出していて‥


正直、怖い‥



ゆっくり動き始めた小太郎さんは物音を立てずに静かにカーテンと窓を開けていく‥


外は暗闇の中、冷たい風が頬を掠めていく

目を凝らしてバルコニーを伺う


暗くてよく分からないけど



誰か‥‥居る‥‥‥!



私が勝手に動かない様にする為なのか小太郎さんに後ろ手で背中に押さえ付けられてるから少ししか見えないけど‥


なんか‥‥赤と白っぽい‥?


よく見える場所を確保して(小太郎さんの腕の隙間)マジマジと観察してると、倒れてた人影がピクリと動いて起き上がる


「‥あたたたた、痛いでおじゃ〜‥」



おじゃ??



「‥麿は一体‥‥ここはどこでおじゃ?‥」


「‥‥‥ッ!!!」


おじゃとかありえねぇ語尾を付けた人物が一言二言喋り終わると小太郎さんが眼を見開き、さっきの比にならない位の殺気を一瞬放って私の目の前から消えた



正確には前方のおじゃって語尾付ける人に向かって凄い速さで跳んでいった


「‥っ!?おっ、おじゃっ!?何者で‥」


なんかおじゃおじゃ言ってる人に小太郎さんが近付いた瞬間に両手に持っている刀で凄い速さで切り掛かった


「おじゃぁぁぁぁぁああ〜!!」


衝撃が余程強かったのか、切り掛かったその反動でおじゃの人は後方に吹き飛ばされてバルコニーから落ちていった


小太郎さんは落ちたのを確認して両手に携えた刀を綺麗な弧を描き回しながら背中にある鞘に同時に納めたら刀独特のキィンと音が響いた


「‥‥‥‥」


『‥‥ちょっ、ちょっと小太郎さんっ!?‥なんでいきなりっ!』


てかいつの間に押し入れから刀取り出したのっ!?


疑問が次から次えと浮かんでくる私とは対象的に小太郎さんは小さく鼻を鳴らし、至極満足そうに赤と白の人を吹き飛ばした方向を見詰めていた


「‥‥‥‥」


『‥あ〜あ、折角準備して成功したのに‥もしかしたら何か情報が‥』


小太郎さんがいきなり襲い掛かる位なのだから知り合いなのかもしれない


切り掛かられても、あんなに元気そうにおじゃ〜って叫んでいたから死んではいないよね‥‥?


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」



あ‥‥ヤバイ‥‥


なんか場の雰囲気が変わった‥


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


無言のまま小太郎さんはゆっくりと物音一つ立てずに私と向かい合うように振り返る




迂闊でした


物凄い迂闊にポロっと言っちゃいました‥



‥‥ごめんなさい


本当にごめんなさい



猛反しております



だから



だから



足音もたたない忍び足でゆっくり私に近付いてこないで下さい〜〜〜!



いやぁ〜何なのっ!



だから口許のニヒル笑いは止めて〜!



やっと本能が生命の危機を察知したのか凍りついていた足に自由が戻り、リビングに慌てて逃げ戻る



鍵かけて怒りが鎮まるのを待たなくてはっ!



そう考える思考


動き出した足



身動き取れない身体





それは掴まれてる腕のせい‥



一瞬にして体から血の気が引いていく‥



駄目駄目駄目駄目っ!


振り向いちゃ‥振り向いちゃ駄目だっ!


絶対に‥‥










『恐ろしいくらいニヒル笑いしてるから〜〜!!』


叫びながら勢いよく上半身を起こす感覚で意識がハッキリする


ハァハァ‥‥‥


肩で大きく息をして、汗びっしょりな身体を起き上がらせれば何時もの寝なれなれた私のベット‥


『‥‥夢‥か‥‥』


あ‥はははは‥


良かった‥‥本当に良かった‥



夢で良かったよ〜〜



でも‥‥‥


なんだろ?


首の後ろが鈍く痛い気がする
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