SHORT

□招かれざる客〜その名はおじゃ〜
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‥‥静寂





何もなかった様に一瞬で辺りが鎮まりかえった




きっかけは一つの手裏剣らしき物‥




先程まで騒ぎ立てていた人物の頭(帽子?)に‘それ’が刺さって動かなくなっているのをいい事に



私はそっと


この素晴らしい静寂をもたらしてくれた物に手を伸ばした



なるべく刺さってる下の方を見ない様にして‥


だって気持ち悪いし‥



後少しで‘それ’に触れられる距離に手が近付くと、いきなり



一陣の強い突風が吹き荒れる



『わっぷっ』


あまりの強い風に一瞬、瞼を閉じて


『‥‥あれ?!』


開いた時には指の先にあった目的の物は消えてしまっていた



へ?‥嘘っ?!

今の突風で飛んで行った?


直ぐに辺りを見てみるけど‥落ちてない


流石にいくら強い風だったからって‥


でも‥ね?一応、バルコニーを一通り見渡して見ようと視界を上げた時に視界になかった物がある



嫌な違和感‥




マジですか?



辺りは暗くて‥‥



まだお隣りさんも帰って来てないのに‥‥



この暗闇でも眼を引く‥




‥‥‥朱






ひぃっ!?



‥‥‥人が居るっ!!



確実にいらっしゃる!ってちょっと待って下さい


そこ、バルコニーの手摺りですよ?!
人が立てない訳じゃないんですけど、かなり危険なんですけど‥?


いやいやそうじゃないでしょ!私っ!!


私ん家のバルコニーになんで居るんですかっ!


そうだよっ論点はそこだよ


『‥あっ‥あの、なっ何か用です‥か?』


突如にして現れた不法侵入者二人目に恐怖しつつ問い掛けても返事は待てど返ってこない



なっ

なんなのっ?!何も言わないでさっきから手摺りに立ちっぱなしで腕組みして!


ぶっちゃけ用事ないなら帰って下さいっ


私はこの足元に倒れてる人物で一杯一杯です!



一向に沈黙を保ち続ける赤髪の人は何をするわけでもなくずっと同じ方向を‥‥

多分、見てると思う‥



いかんせん、この赤髪の人の目許は長い前髪で隠れているので視線を定めるのが厄介です



つられる様にその見ている方向に私も視線をやれば




うっ‥!



バケツに入ってた水に苔(コケ)が発生していたみたいで、倒れてる人物の落ちかけてる白い顔面にまだら模様に苔がびっしり張り付いている



うわぁぁぁーーー!!!


汚い気持ち悪いにプラスして生臭いっ!!


白光りしてる顔にくっついてる苔がやけに綺麗な緑色をしてるのは何故ですかっ!?



ここまで凄い状態になるとさっきまでの直視出来ないどころか凝視してしまう



偶然の産物なはずなのに、もはや神懸かり的な‥‥



‘それは偶然ではなく必然です’



私の頭に某tv番組の台詞が浮かんだ事さえ必然に思えてくる‥‥‥



あっ!そうですよっ!


もしかしたら、この倒れてる人と赤髪の人もっ


『あっあの!貴方はもしや紅茶王‥っいえ、この人と何か縁のある方なんですかっ?!』


つい、紅茶王子ですか?
と口から出そうになったけど、そこはスルーの方向でお願い致します



「‥‥‥‥‥」


ああっ

やっぱり無視ですか?
一部は無視してくれて一向に構わないんですが全部は無視しないで下さい


でも、諦めません


『いきなりこの人が上から降って来たんですけど、一体なんなん「‥ぉ」ですか?』


ん?
何か話しの途中に声が‥?

嫌な予感がして足元を見遣れば、倒れて人物がピクリと動き


「‥ぉっじゃ」



もう聞きたくないそれと同時に



カッ



勢いよくピンポイントに頭(帽子)に手裏剣が刺さる音が、再び訪れた静寂に響く



あっ、また動かなくなった

って!なんでやっぱり手裏剣!?



『い、今の貴方がやったんですか?!』


素直に疑問を尋ねても返って来ない答え


『‥一体、貴方とこの人は何者なん「‥じゃぁっ」ですかっ!』


カッ


また話しの途中に別の声が混じると帽子に何かが刺さる音がする


今度は視線を赤髪の人に向けたままだったからはっきり見ましたよ!


『‥やっぱり貴方じゃないですか物騒な物投げてるのっ!!』


「‥‥‥‥」


『確実にこの人「‥っお」の関係者ですよねっ?!』


カッ


『‥ほっほらっ!また投げましたよね!?』


「‥‥‥‥」


『‥お二人「‥じゃ」がどんな関係か知りませんが』


カッ


『うちのバル「‥っぉ」コニーでは困りますっ』


カッ


『あのっ!「‥っもじゃ」凄く困るので「‥ぅお」誰の迷惑に「‥ぉじゃ」もならない所でやって下さい!』


カッ
カッ
カッ



‥‥‥今、連続で音しませんでしたか?


でも、今は気にしてなんていられない

赤髪の人に言いたい事を全部ぶつけて、後は向こうがどう出るかを待つだけ‥
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