SHORT

□招かれざる客〜その名はおじゃ〜
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一歩足を踏み入れ、部屋に戻れば住み慣れた居心地のいい空間。


ホッと胸を撫で下ろせる安堵感に包まれて、洗い物がないキッチンのシンクに心境を代弁するかの如く不快な音を立て続けていたティーカップを置いた。


辺りを見回して私は目についた空の1リットルのペットボトルに無造作に水を入れ始める。


ドボドボと水が溜まる音がたつ中、ふとシンクを見ていたら、最後に洗い物らしい洗い物をしたのはいつだったっけ?なんて思って、すぐに馬鹿らしくなって考えを打ち消した。



そんな事を考える暇があるなら早くバルコニーの物体を何とかしなくちゃ‥。


満タンとしか言いようのないペットボトルにフタをして、バルコニーに目をやれば室内からでもハッキリと判る、月明かりで照らされたあのブツ。



先ずはあの悲劇的な顔をこの水で洗い流そう!
上手くしたら意識が戻って家から出てってくれるかもしれない。


ずしりと重みを感じる腕で私はもう一度、悪夢としか言い現せない事態が起こってるバルコニーに足を踏み入れるべく長窓を開いた。



見上げた満月はかわらず綺麗だった

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2009.7
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