Novel

□砕けた恋の結末は。
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一人の少女の恋が終わったあの日から数日が過ぎた。余りに虚しく(主に頭の)可哀相な終わり方だったのだが、どうやらAくんに動きがあったそうだ。それを伝えてきたのは朱宮有希。彼女に彼が告白してきたと言うのだ。
聞いた時はそりゃ寝耳に水だったさ。まあそれでも人間誰でも順応性は高いようで、ああ、またこのパターンかと呆れてしまった。だって、大体彼女が相手を見限ってから相手が告白という行動に出るのだ。それはもう不可解すぎるくらい高確率で。
以下、その時の会話。


「朱宮くん、だね」

「……ええ」

この時有希は大変相手にしたくないオーラを放っていたという。それに気付かないとは、少々、いや、かなり可哀相なオツムの持ち主だ。

「……何かしら」

「その、だな。実はオレは、君を好きになってしまったんだ」

「………………はァ?」

それはそれは突拍子もなかったと有希が嫌そうに口にしていた。確かに、何の脈絡もなく告白されては雰囲気も何もあったものじゃない。いや、呼び出された時点で一応相手には雰囲気があったのかも知れないが、有希が気付かなければ意味はない。

「あ、余り驚かないでくれ?君は、その、実は今プレイしているゲームの攻略キャラクターにそっくりなんだよ。声は違いこそすれ、外見も、性格も」

「……」

余りの馬鹿らしさに有希は声も出なかったという。うん、ボクもこんな告白嫌だ。
それから腕を掴まれて表情が嫌悪に歪んだそうだ。

「だから、君を見てきっと神がオレにくれた一世一代のチャンスなんだと理解した!だから、告白しようと決めたんだ」

「……」

「オレは君が好きだ。どうか、返事を聞かせて欲しい」

『下らない、実に下らない。一時でも私はこの男に惚れ、告白しその元に、この高貴な私が降ろうとしていただなんて……!』

有希はもう我慢の限界だったらしく、そんなことを思ったという。
まあ、とりあえず感心するね。そこまで話を聞いてあげるなんて。ボクなら真っ先に切り掛かる。視界から、世界から存在を完全に消してやる。

「なあ、朱宮く一一」

「申し訳ないのだけれど、私オタクが大っっっ嫌いなのよ!見るだけで鳥肌が立つし声をかけられるだけで嫌悪に肌が粟立つの!触られたりなんかしたら……っ、気持ち悪くてぶっ飛ばしてやりたくなる!!」

「あ、朱宮くん?」

「いい加減っ、この手を離せぇっ!」


その後は皆さんの想像通りだろう。Aくんは全治二ヶ月の重体により入院を余儀なくされた。彰斗が通り掛かっていなければもっと酷くなっていたのではないだろうか。彼女は平気で人に危害を加えられる人間だ。皮肉なことに、ボクも彰斗もまた同じ。
まあ、そんなこんなでAくんも呆気なく玉砕。いい気味だ。
有希はもうあのタイプを好きになりたくないなどと言っていたけれど、多分無理だろう。いつどこの誰が隠れオタクかも分からないのだから。不可能だ。

「皐月ー、いい加減有希を泣き止ませてくれヨーっ」

服が涙でびしょびしょだと文句を言ってくる彰斗に、ボクは仕方なくそちらに向かうのだった。


所詮恋とは、愛とは思い込みで、想い込みで、念い込みなのだ。また、それらは幻想だ。夢幻だ。
人間が自分以外を心から好きになるなんて、恋をするなんて、愛するなんてことは、絶対に有り得ないのだ。





果たして恋心などというものは、
どんな理由で抱くようになったのだろうか。

(sexなんて、愛がなくても出来るじゃないか)



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