□休息の中の不穏
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朝…目覚めるとそこには見慣れた天井。
カーテンの隙間から射し込むいつもの朝日。
夢だったのか?
そんな思いが頭を過る。
しかしそんなわけはない。戦った記憶は鮮明に残り、なにより直撃した雷の火傷が肩に少し残っていた。
夢ならどんなに良かったか…
そんな事を思うがすぐに捨て去る。
覚悟したのだ、戦う覚悟を…召喚師として生きる覚悟を…
一度だけため息をついてカーテンを思い切り開く。
朝日がいつも以上に眩しく感じられた。
†・†・†
「おはよう」
下に降りるとルナ、メイ、爺ちゃんが談笑していた…
はぁ…
またため息をつく。
『おはようございます、恵☆』
と降りてきて寝癖でボサボサの俺に微笑むルナ。
ルナは可愛らしい白いワンピースを着ていた。
『おはよ』
軽く挨拶をするメイ。
メイは白いTシャツにジーパンとラフなスタイル。
『おはようさん』
いつもの挨拶をかけ、いつものお茶を煎れてくれる爺ちゃん…
爺ちゃんだけなら変わらない日常。
女の子二人がいるだけでこんなにも日常が非日常に見えるとは思わなかった。
ルナの隣の椅子に座りながらつくづくそう思う。
爺ちゃんはご機嫌だった…俺が召喚師になったことが余程嬉しいのだろう。
いつもは本を読みながら茶を啜っているだけなのに今日は良く喋った。
召喚師の心得
礼儀作法
証の事
しまいには召喚式。
そんな事をずっと話し、時折ルナやメイに質問をしたりと忙しく…無駄に興奮していた。
そして…何故メイがここに居るか…
それは一般家庭が「彼女は俺が召喚した精霊だから今日から一緒に暮らすから」と言って「はいそうですか」と受け入れるハズもなく、俺の家に居るわけだ。
基之は今朝早くに家に帰ったらしい。
一度帰ってまた来るらしいが…
とにかく…
俺は『日常』という『道』から大きく外れた。
引き返す道は危険という土砂で既に埋もれてしまっている。
また俺はため息をつく。
日常に戻る…そう決意したが…本当に戻れるのだろうか…
その様子に気付いたルナは俺の顔を覗きこむ。
『どうかしましたか?』
蒼い瞳に銀の髪…今は一つに結っていない銀の髪はさらっとルナの肩にかかっている。
「いや…」
と顔をそらす。
妙に動悸が激しい。
こう見れば、彼女はただの可愛い同い年の少女だ。