□修行…そして護衛
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あの戦闘後、俺達は涼平を運び、俺の部屋に寝かせた。
何故か爺ちゃんがいなかったが…傷の手当てを優先した。
両肩から腰にかけて大きな傷痕が出来てしまった。
もう海や川じゃ泳げないな…
基之が先に帰っていたが起きていたのはメイだけ。
『…もう十二創支が動いたんだ…まずいわね…』
『えぇ、私達精霊にはとても厄介なことです』
二人が話しているのを俺は横で聞いていた。
正直、話に参加できる状態ではなかった。
魔力による心身の痛みが激しい…
油断したら叫びそうだ。
その様子に気付いたルナが心配そうに顔を覗く。
『大丈夫ですか?…魔力を私に流してください…じゃないと身体がもちませんから…』
俺はただゆっくり首を横にふった。
これは俺自身の魔力で、問題だ。
自分だけで克服しなきゃ自分の力にならない。
『…ルナ、恵…もう1つ十二創支以外に問題があるの…』
俺達が振り向くのを見て、クロムという奴から得た情報を俺達に話した。
『…そんな…"鬼導師"が…それに…黒い私…?』
『うん、私の予想ではその黒いルナは鬼…』
鬼導師…
その言葉で"心"の中で聞いた女の子の言葉を思い出した。
-鬼を操る者…名前は…
「藤華」
『!?』
二人が同時に振り向いた。
「…俺の分身…らしい」
絶句していた。
そしてなにかを訊きたそうにしていたが、悩むように黙りこんでしまった。
「とにかく、状況は切迫してる。…今のところ、俺達は不利…いや…不利どころか奴等が一斉に出てきたら簡単にお陀仏だな」
そこで俺は魔力の痛みにくっと呻き、胸を押さえる。
『…確かに…十二創支が相手じゃ今のままだと殺られるわね』
『どうにかしないと…』
「ってか…その前に俺達自身の強化だ…俺も、基之も…涼平も…まだ弱い…それを今回の戦闘で実感した、基之も涼平も同じだろう」
二人がゆっくりと頷いた時、ドアが開く。
「ふむ、確かに恵達は弱いな」
「爺ちゃん…今までどこに…」
俺が尋ねようとしたが、手で制される。
「…恵達はそろそろ夏休みじゃろ?修行を開始しようじゃないか」
…修行か…
何年ぶりだろうか。
『…そうね、基之も鍛えないと…本当に死にかねない…』
メイが真剣な眼で…基之の心配をしていた。
『…私も、恵との連携をもっと完全なものにしなくては…恵どころか、自分自身すら護れない』
「決りじゃな」