□鬼導師の青年
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φ・φ・φ
最近では日常茶飯事になってきた夜の散歩が静かに続いた。
俺達は並んで歩き、空を仰いでいた。
星が瞬く空には煌めき神々しい満月が輝く。
「風が気持ち〜なぁ〜」
夏にしては冷たい風が頬を撫で、その感触に満足する。
『そうですね〜♪』
ルナも満足そうに頷いた。
会話もそこそこに進む散歩の途中、彼女は少し前に出て俺に振り返った。
『恵、一つだけ…訊いていいですか?』
彼女の表情は、笑顔の中に少し真剣味が帯びていた。
「いいけど…」
少し困惑しながらも、微笑み頷く。
『恵は…その…私を召喚したこと…後悔していますか…?』
その問いには少し驚き…迷ってしまった。
『…どう…なんですか?』
ルナの表情に不安が出る。
「…正直、後悔してたかもしれない」
俺の一言にルナの表情が暗くなった。
「だけど…今は判らない」
『わから…ない?』
「うん。ルナと会って、楽しい時が増えた事…夜に話相手が出来たし…召喚して良かったって思ってる」
ルナは黙って聞いていた。
「ん〜…だから…まぁ多分、今は後悔してないよ。ルナといて悪い気はしないし…むしろ楽しいし……」
『えと…つまり…?』
「後悔はない。今はこの状態で…満足しているし、これは俺の選んだ道なんだ。悔やみよりむしろ誇って良い事だと思う」
笑って答えた。
そう。
これは俺が選んだ進むべき道なんだ。
自分が悔やむ必要はない。
誰かに哀んでもらう必要もない。
『…良かった…』
ルナの安堵が少し心地よかった。
「ま、この先大変な事や苦労する事ばっかだろうけど…なんとかなるだろ」
気楽に言い、歩き出した。
『…恵、待ってください』
俺の隣りに駆け寄り、にこり微笑む。
その瞬間、膨大な魔力の発動を感じ、二人同時に振り返った。
『恵!!』
「…行こう」
一言で俺達は行動を開始した。
駆ける。
「…………」
今の膨大な魔力の持ち主を、俺はもう判っていた。
(…藤華)
何故ならば…
奴は俺なのだから…
駆けた先には巨大な鬼。
その肩にいるのは…
「…藤華!!!!!」
「よぉ。やっと顔合わせだな」