□十二創支の暗躍
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Φ・Φ・Φ

風が吹いていた。

俺はその風に吹かれて庭に大の字で横になっていた。

『起きなさいよ。いつまでもそうしてると風邪を引くわ』

そう言った少女が俺に手を差し伸ばした。

それを俺は握って起き上がる。

すると汗で濡れた体が風に触れてブルッと震えた。

確かにあのまま寝ていたら風邪を引いていたかもしれない。

『さっき恵から電話があって、明日には帰るって。それと…藤華の事は解決したって言ってた』

セミロングの茶髪を風に揺らした少女はそう言った後、首をこきりと鳴らした。

「そっか。まぁもうすぐ夏休みも終わるしな」

立ち上がって首を回す。

体が軽く感じるのは随分と痩せて体が引き締まったからだ。
前とは比べ物にならない肉体を手に入れた。

『基之も召喚師としてまともになったし、上級魔眼は手に入れてきたし、私は文句のない仕上がりだと思う』

パートナーのメイはそう言ってにこりと微笑んだ。

そう。
俺は強くなった。
魔力、体力、精神力の強化に成功。
それに加え特殊疑似魔眼“真偽の眼”を手に入れた今、そう簡単には倒されない。
特殊疑似魔眼と表したのは、正式な魔眼ではないからだ。
常に能力を解放する正式な魔眼とは違い、普段はその能力は表には顕れない。
だから、“特殊疑似”と名を打っている。

この魔眼は魔力を通す事によって視覚を得る。
つまり普段は失った時と変らず“視えない”のだ。

「ふむ。まぁ新しい破術も幾つか覚えたしなぁ」

『使用が簡単で速い破術と強烈強力最強無慈悲な破術を二つ、だからね』

説明がおっかないが、確かにその通り。
放てば最後、俺の勝利は固い。

一つは多使用出来て扱いやすく強力な破術…

“Impact Sturm und Drang(疾風怒濤の衝撃)”


これは風属性の乱打系上級破術。
風圧を幾つもの球体へと収縮し、それを放つ。
掌に収縮した球体を宿らせ、直接打撃も出来るという優れ物。
詠唱も短く使い勝手が非常に良い。

そして二つの破術。

一つは星系上位破術…

“Infinity Of Meteor Roar(無限に吼える流星)”

そして二つ目は突貫専用一撃必中星系最上級破術…


“Astral Charge(星の突貫)”


イメージは頼子の一撃必殺。
威力は劣るがダメージは通常の破術とは桁違いだ。

更に…頼子とメイの力を借りて作り上げた魔力による最強の武器の具現化。

“北欧神槍-グングニル”

そして俺の魔眼と合わせた最強の技の名が…

“虚-穿つ光の絶槍
ディグゼクシードランス
(Dig-Zexyd-Lance)”

一撃必殺を使わない様に編み出した今の俺の出せる技の中で二番目に位置する大技。

カウンターで放つこの技は必的必中。

外れる事は絶対に有り得ない。

「北欧神槍グングニル…」

側にいた寒椿が呟く。

「どした?」

「いや…一回手合せするか?」

と寒椿は片刃の剣を呼び出す。
それに応して俺は頼子を呼び出して構える。

「いいな、こいよ。見せてやる」

寒椿との一騎打ち。

「さぁ、行くぜ!!」

ダンッと地を蹴る。
互いの武器が激突する。

それは弾かれ身体が離れる。

頼子の形態を剣に変えて跳び上がる。

足元に六亡紋を展開して空へと翔け上る。

寒椿も同じ様に俺を追ってくる。

それを楕円形に展開した六亡紋に乗り空を滑空して迎撃する。

頼子と剣が何度も激突し火花を散す。
「頼子。今から三合打ち合った後破形へとチェンジ。
詠唱読込(リードチャージ)は今やれ。…破術は全てだ」

頼子が一度脈打った。

それから三合の打ち合いの後…

詠唱読込は終り破形へと姿を変える。

俺は瞬脚烈歩で距離を取り空高く頼子を掲げる。

そして紡ぎ出す奇跡の詠唱。

それは…

「“制約破棄-展開方位-東西南北-破術特定
-魔力解放-破術詠唱解放(Limit Out-Open Direction-East.West.South.North-Breakar Specific-Power Release-an Aria Release)”」

全ての破術を一息で解放する!!

「“破術乱舞-Dance Madly Break”」

寒椿の周囲から俺の持つ全ての破術が放たれる。

四方八方から飛び交う破術を自らを覆う氷の壁で防ぐ。

だがそれも時間の問題。

即席の防御壁など自分の最大破術を防げるわけがない。

魔力消費は激しいが…次で決まるのだから問題もない!!!

「“我が力蒼天穿つ魔槍と成れ-汝を穿て-北欧に伝わりし神殺しの槍よ”」

頼子の形態が変化してゆく。

それは長く長い穂先を有した槍。

「“北欧神槍-グングニル”」

ここに、奇跡の神具は顕れる。
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