□戦闘開始-古城
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Φ・Φ・Φ
俺達は爺ちゃんを家の側にあった納屋に横たえた後、学校へと戻って来ていた。
此所から奴等の気配を手繰り寄せ、向かうしかないからだ。
涼平と錬がいないのが中々に痛い。
二人のサーチ能力は白夜月光の中でずば抜けて高いからだ。
ルナが良い線いくが、涼平や錬程ではなく細かいサーチが出来ないのだ。
『…見つけた』
探し始めて一時間が経とうとした時、ルナが呟いた。
『恵、此所を思い切り斬って下さい。藤華さんが結界を斬った様に』
俺は既に抜いていた牙を言われた通りに振り抜く。
すると一瞬、ほんの一刹那、次元が歪んだ。
『特定しました。此処に裂け目ができます。ただ、生半可な衝撃じゃこじあけられません』
「手は?」
『私と恵でシンクロして、ごり押しですね』
「判った」
怒りで返答が淡白になる。
『いきますよ、恵!』
「意識同…「待ちたまえ」
二人の意識同調を遮る制止の声、それは背後から…神谷雅樹がかけた声だった。
「なんだ、居たのか…アンタ」
「そう言ってくれるな。…此処から行くのは危険だ。私が艦を提供する。それで行こう」
『…アンタを信用していないわけじゃないけど、無事につける保障はあんの?』
メイの鋭い眼光が雅樹を射抜く。
それを真向から受け止める雅樹は、頷いた。
「少なくとも、今君達がやろうとしている事よりは安全な筈だ」
『…言ってくれるじゃない』
イライラとした声。
「すぐにでも向いたい。準備出来るか」
「貫禄が出てきたじゃないか。…もう朱雀がウォルウィングを起動し待機している。転送破術ですぐにでも向える」
雅樹の答えに頷いて、皆を一瞥する。
…今、気付いた。
俺達は、ボロボロじゃないか。
満身創痍疲労困憊。
このまま向かっても、戦えそうもなかった。
「神谷。ウォルウィングには医療専門の破術師はいるか?」
「…漸く冷静になったか。いる。すぐに転送しよう」
雅樹の詠唱の後、世界が歪み、気付いたらウォルウィングの中の一画…転送室の機械上だった。
「司令官、お疲れ様です。朱雀様の命により艦はいつでも航行可能です」
「よし、航行を開始しろ。あと、医療班を回せ」
「はっ!」
一人の男に命じて俺達をだだっ広い部屋へと案内し、神谷はいなくなった。
その後医療班に治療をされる。
基之はやはり傷が酷く、治療が長くなった。
俺、ルナは軽傷で済んでいた故に治療は殆どなかった。
時音さんに関しては、別件により長くなっていた様に思える。
事実は判らないが。
時間が刻々て過ぎていく中、治療が終った俺達は作戦会議を開いていた。
「涼は多分もう奴等のアジトへ潜入している。涼と合流後、そこでルート検索、作戦の見直しをする。出来る限り離れない様に進行していき、椿を助ける」
『先陣は私達が切る。出来るだけ恵とルナに負担をかけない為に円状に広がって走る様にして』
メイの指示に皆が頷く。
「あと、一つだけ」
俺は静かに言う。
「さっきは怒りで我を忘れていたけど…
最優先は自身の生還。目的は俺が必ず達成するから…だから、生きろ。死ぬ気で生き残れ」
その言葉に、皆が頷いてくれた。
眼には覚悟と強い意志が宿っていた。